ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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いたが、一体どうしたのだろうか。
大輔だけならともかく、賢まで湯船を覗いて困ったような表情を浮かべている。
『ダイスケ?』
『ケン?』
パートナーがそれぞれ声をかけるも、反応しない。
代わりに、大輔は空いている左手を恐る恐る、と言った様子で湯船に伸ばした。
ちゃぷん、と少し熱いお湯の中に、大輔の小さな手が入れられる。
揺れている水の感触。だが大輔はますます不思議そうな表情を浮かべて、首を傾げていた。
「おい、大輔?」
再度太一に声を掛けられた大輔は、それでようやく我に返った。
太一と治、そして光子郎が、怪訝な眼差しを向けてきているのを理解して、慌てて何でもないですと言って湯船に入る。
右手でブイモンの手を握ったままだったせいで、引っ張られたブイモンは、ちょ、ま、ダイスケガボガボと悲鳴を上げて湯船に沈みかけることとなった。
大輔が入るのなら、と言いたげに、賢もパタモンを抱えながら湯船を乗り越えて、そろそろと足をつける。
その際眉を一瞬だけ顰めたが、誰も気づいていなかった。
「お邪魔しまーす……」
小さいのによく響くのは、浴場に敷き詰められているタイルのせいだろう。
すりガラスの引き戸が遠慮がちに開かれ、中に入ってきたのは腰にタオルを巻き、恥ずかし気に隠した丈であった。
男同士なのだから、照れなくてもいいのに、と太一が呆れたように言う。
眼鏡が曇るという単純な、しかし眼鏡族にとっては命と同じぐらい大事なために、眼鏡を外している治は、裸眼だと顔をくっつける距離でなければぼやけて何も見えないために、丈がどんな格好をしているのか分からない。
太一が丈の格好を伝えてやれば、そういう人もいるんだから気にするな、という大人の解答が返ってきた。
「でも湯船に入る時は外してくださいよ、タオルの繊維が排水溝に詰まったり、タオルについている汚れとかでお湯が汚くなっちゃいますからね」
もちろん、しっかりと釘を刺すのも忘れずに。
「ヒカリちゃん、どうしたの?」
「入らないの?」
一方、女湯も男湯と似たような状態となっていた。
空とミミは久しぶりのお風呂で、男子達と同じようにリラックスした表情で湯船に浸かっている。
ピヨモン達も疲れていなければ、一緒に入れてあげたのになぁってちょっと残念に思っていたら、1番小さい女の子がなかなか入ってこないことに気づいた。
パートナーのプロットモンを胸に抱いて、じーっと湯船の中のお湯に視線を落としている。
右手をそろそろとお湯につけて、何かを確かめているように見えた。
「ヒカリちゃん、もしかして熱いの苦手?」
「そうなの?ちょっと水入れて冷ます?」
「え?あ、いえ、大丈夫、です」
「本当に?熱かったら我慢しなくていいのよ?」
「足だけお湯につ
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