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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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いた。

「太一!あれ!」

隣にいた治が夜空を指さす。
その先を辿って目線を向ければ、縦横無尽に夜空を駆け巡っているベッドがあった。
浮いている。子ども達を乗せて、恐怖に引きつって悲鳴を上げている子ども達を嘲笑うかのように、ベッドが暴れまわっている。

「まずい、あのままじゃ振り落とされる!」
「ガブモン、進化できるか!?」

治がガブモンを振り返ってそう問いかけるが、ガブモンの答えは残酷なものだった。

『ご、ごめん、オサム……すごく疲れちゃって、お腹も空いてるし……』
「……っ、そ、うか……!」

何故、と責めることは、治には出来なかった。
連日連夜の戦闘で、疲れを見せ始めていたデジモン達。
この屋敷を見つけた時も、デジモン達は食べることよりも眠る方を優先してしまった。
食べることが大好きなデジモン達だが、それすらもままならないほど疲れていたのだ。
立派な外見の屋敷を見て、他のデジモンが襲い掛かってくることもないだろう、という安心と油断もあったのだろう。
子ども達の安全が確保できたのなら、子ども達を守るためのエネルギーを摂取するよりも、疲れた身体を休める方を求めてしまったのだ。
まさかその選択が仇になってしまうなんて。

「うわあっ!!」
『わあっ!!』
「っ、太一!?うわっ!」
『アグモンッ!!わっ!?』

そして、また油断。
進化をしてデビモンを追い払う選択肢を奪われた太一達は、周りへの警戒心が疎かになっていた。
空(から)のベッドが、太一達に襲い掛かってきたのである。
避けることが叶わなかった太一とアグモンは、ベッドに掬い上げられる形で乗っかり、他の子ども達と同じように上空へと連れていかれた。
親友の名を紡いだ直後、治とガブモンも同様に。


不安定に揺れながら空を駈けるベッドに、何とかしがみついて、振り下ろされまいとみんな必死だった。
響き渡る子ども達の阿鼻叫喚に酔いしれるように、デビモンは嗤っている。
太一は、叫んだ。

「くそ……何故だ!何故俺達をこんな目に合わせる!?お前の目的は何だ!!」

デビモンの気に障るようなことをした覚えなどない太一には、デビモンの目的が分からない。
今まで太一達を襲ってきたデジモン達は皆、縄張りに踏み込んでしまったり、黒い歯車で操られていたりと様々だったが、デビモンのように明確な悪意と敵意を持った相手は初めてだった。
自分達は、ゲンナイに頼まれてこの世界を救うために旅をしているだけなのに。
デビモンの口の端が、顔を裂くほどに吊り上げられた。

『知れたこと……お前たちが“選ばれし子ども達”だからだ!』
「…………な、に?」

選ばれし子ども達。それは、ゲンナイがこの世界に言い伝えられている、異世界からやってきた救
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