ちいさなしまのおはなし
闇に潜む者
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ンに問いかける。
ガブモンの赤い目は、瞳孔が開ききっており、まさに獣の目をして虚空を睨みつけていた。
見れば他のデジモン達も、似たような、いや、全く同じような目をして何処ともないところを見つめている。
それはまるで、子ども達の命を狙っている姿なき敵意を持った者と、対峙しているようだった。
力を持たぬはずの人間の自分でも、ガブモンが強烈な闘志を抱いているのが分かる。
ガブモンだけではない。アグモンもピヨモンも、テントモンやパルモン、ゴマモン、そしてブイモンとパタモンとプロットモンも。
《夢はもう失われた……》
背筋を指先でなぞられたような悪寒が走る。
がっちん、と子ども達の全身が硬直したと同時に、朽ちかけていた屋敷に更なる変化が起こる。
パリン、というガラスが割れるような音がした。
一枚のタイルを剥がしていくように分解されていく屋敷を、子ども達は黙って見ていることしかできない。
朽ちかけていた屋敷は、更に表面を引きはがされ、やがて細かい粒子となって本来の姿を子ども達に晒した。
それは、屋敷などではなかった。豪邸などではなかった。
最早その役割と機能を果たしていない、ただ不安定な柱に支えられた足場に、ベッドが置いてある、そんな状況だった。
「何だよ、これ!!」
「一体、どうなって……!?」
太一と治が思わず、と言った形でベッドから飛び降りる。
アグモンとガブモンがすかさず2人の前に飛び出ていった。
ぬう、
と。
月と星空が作り出すにしては不自然なぐらい濃い影から、悍ましい闇の気配が姿を現した。
ひ、と賢の喉が引きつる音が聞こえた。
『…………っ!』
アグモンとガブモンが、影から顔を覗かせた闇に気づいて息を飲む。
頭部から飛び出た2本の角、全身を闇で纏い、異様に長い手は心臓を鷲掴みにして離さない。
ボロボロの羽は、まるで蝙蝠のそれとよく似ていた。
『デビモン……!』
『何で……どうして、お前が……!』
「……アグモン?」
「ガブモン……?デビモン、て……」
曰く、最強最悪の、闇を司る闇の体現者。
光を嫌い、光を憎み、闇を愛するムゲンマウンテンの支配者。
普段はムゲンマウンテンを住処として、滅多に山を下りてこない。
それが、どうして目の前に降り立ったのか、アグモン達には理解できなかった。
す、
右手を掲げる。闇のオーラが、手のひらから排出された。
「きゃあああああああああああああああっ!!」
「!?」
響き渡る絶叫。それは、妹のものだった。
ぎょっとなって振り返れば、先ほどまで自分が寝ていたはずのベッドがない。
いや、自分のベッドだけではない。仲間達が使っていたベッドが、全てそこからなくなって
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