ちいさなしまのおはなし
つかの間の休息
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「ねえ、太一さん。どうして丈さんのこといつも呼び捨てにするんですか?」
それは、丈とゴマモンがいないことに気づき、空が太一達を叩き起こした際のことだった。
みんなで辺りを探したけれど何処にもいなくて、もしかしたらムゲンマウンテンにゴマモンと2人だけで登ったのでは、という結論に至った。
自分は決めるのに時間がかかるから、ムゲンマウンテンに向かうか否かは、明日になってから決めようと言い出したのは丈だったのに、その丈が自分で言い出したことを無視して、1人で向かってしまうなんて、一体何を考えているのか。
太一が呆れながら丈に対して悪態をついていたら、大輔がふと口にしたのだ。
太一はヒカリと、賢は治と、そして大輔は光子郎と一緒に辺りを探していた。
何処にも見当たらなくて、一度テントに合流して、話し合っていた時のことだった。
突然、思ってもいなかった質問をされた太一は、虚を突かれたように大輔を見下ろす。
そんな太一に気づかず、大輔はこう続けた。
「太一さん、俺が呼び捨てしたらすっごく怒ったのに、どうして太一さんは丈さんのこと呼び捨てにするんですか?」
雷に打たれたとは、まさにこのことだろう。
そういえばアメリカから転校してきたばかりの時、大輔は日本語が分からなかったから、日本の暗黙のルールなんて全く知らなかったから、太一のことを呼び捨てにしたことがあった。
年上にはさんをつけろと、先輩って呼べと太一は大輔にすごく怒っていたのに、その太一自身が年上である丈を呼び捨てにしている。
あまりにも自然で、あまりにも無意識だったから、誰も指摘しなかった。
丈がもう少し頼りがいがあって、自分の意見をはっきりと言える性格だったら少しは違っていたかもしれない。
しかし最年少の大輔から見ても、丈はあまりにも頼りなさ過ぎた。
太一と治と空がさっさと意見を述べたり、決定するのが早すぎて、丈が口を挟む隙すら与えなかったというのもある。
しかしお姉ちゃんと同い年であるという事実が前提にある大輔としては、丈にはさんをつけて敬語で話すのは当たり前だった。
それなのに、太一は平気で呼び捨てにし、敬語も使わない。
敬うも何もあったものではない態度が、大輔はどうしても不思議だった。
上下関係に疎いデジモン達は頭上にたくさんの疑問符を浮かべていたが、子ども達はそういえば、って顔をして太一に視線を向ける。
太一は、言葉に詰まった。
何と答えたらいいものか、分からなかったのだ。
大輔にはちゃんと敬語を使って、先輩として敬えって言っているのに、自分がそれをしていないのである。
サッカー部の先輩には一応敬語は使っているけれども、それ以外は基本的に敬語は使わない。
同じサッカー部の治と空、光子郎はサッカー部以外の先輩にも敬語を使って
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