ちいさなしまのおはなし
つかの間の休息
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いるのに。
それが太一の性格である、と言えばそれまでだが、自分が使っていないのに大輔には使えっていうのは不公平なのではないだろうか。
「どうしてですか?」
大輔は再度尋ねる。大輔の疑問に引っ張られた賢とヒカリも、大輔と同じような眼差しを太一に向けていた。
「……お、治」
「お前のことだろう。僕に聞くな」
助け船を求めた相手は、その手を振り払ってしまった。
じとり、と睨みつけてくるその目は、責めているようにも見える。
いや、実際責めているのだろう。治がそれとなく、そしてさりげなく丈をフォローしてやらなければ、きっと太一は丈を差し置いてどんどん先に行ってしまう。
太一は、切り捨てたものには容赦をしないのだ。
振り返ることも立ち止まることも、してくれないのである。
ここに飛ばされた時、よりにもよって晒したのが情けない姿だったから、太一は早々に丈は頼りない存在であると判断して、切り捨ててしまったのである。
それが、丈を無意識に呼び捨てすることに繋がっているのだが、太一は恐らく気づいていない。
捨てたことにすら、太一は気づいていないのである。
「……丈先輩が頼りないのは同意だが、年下の前でそういう態度はよくないぞ」
「うう……」
最年少3人に詰め寄られて、逃げ場を失った太一に、治はずーっと思っていて、でも指摘できなかったことをようやく口にした。
仕方なかったのだ、もしもこんな状況ではなく何でもない日常の中で指摘したとしても、太一は絶対に聞く耳を持たなかっただろう。
基本的に治の言うことは聞く太一だが、自分が決めたことに対して口を出されたり窘められたりすると、余計に意固地になってこじれてしまう。
治は、それをよーく知っていた。知っていたから、言えなかった。
こうなってしまったのは、太一と喧嘩をしてしまってでも指摘すべきだったのに、それを怠ってしまった自分も悪い、と治は反省する。
なので、
「太一はね、丈先輩のことを対等に見てるからなんだ」
「たいとー?」
きょとん、と最年少3人は同じ方向に、同じタイミングで首を傾げる。
え、ちょ、ま、っていきなり胡散臭いにこやかな笑顔で語り出した治に、太一は慌てるがその口を塞ぐように右手を思いっきり伸ばして太一の顔に押し当てた。
ばちん、という音がしたのは多分気のせい。
「そう、丈先輩は6年生だけど、1人しかいないだろう?みんなも、お母さんから年上のお兄さんやお姉さんの言うことはよく聞きましょうって言われてるだろうけど、こんなに人数が多いと、丈先輩1人じゃまとめきれないから、太一はその負担を半分こしてあげたくて、わざと呼び捨てにしているんだ」
「そうだったんですね!」
「そっかー、太一さん優しいね!」
「お兄ちゃん、ちゃんと考えて
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