最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第51話 学問の禁忌(1)
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民の肌の色は、通常であれば人間と大差はないはずなのに。
そして彼の背後、ずっと後ろ、この大魔王の間の最奥。
入り口近くのシドウたちからでも、はっきり見えた。
玉座の前に、巨大な棺が置かれているのを。
「ダヴィドレイよ。私はお前に会ったことなどない」
シドウは母親を見た。二人の言い分が食い違っているのは不思議に思ったが、ダヴィドレイが一方的にデュラを見たことがあるのだろうと考えた。
彼を見る母親の冷め切った表情。ドラゴン族が旧魔王軍で彼をどう評価していたのかが、なんとなくわかった。
「大魔王様のご遺体を弔うどころか、アンデッドとして蘇らせ、その御威光を私せんとしていると聞いた。本当なのか」
「……。術はほぼ完成している。お前たちなどに邪魔はさせん」
相手は一人。部下の姿などもない。
この圧倒的戦力差でも戦いが始まるのか――。
ここまでの経緯から、素直に引き下がってくれるとは思っていなかったが、やはりシドウとしては落胆を隠せなかった。
首が垂れる。それをまたティアの肘突きで咎められた。
アルテアの民も魔法を使うことができる。得意な者も多いらしい。
騎士風の姿をしているが、彼は学者。
まさか剣でなんとかしようと思っているわけではないだろう。魔法を使ってくる可能性が高い。その警戒感はシドウたち全員が持っていた。
ダヴィドレイは剣を抜かず、やはり魔法の構えを見せる。
シドウらは全員反応していた。
まずアランが、発動される魔法が火の範囲魔法であることを素早く察知。
冷風を発し、その炎を消した。
ただし威力よりも速さと範囲を優先したため、本体にダメージを与えるまでは至らない。
ダヴィドレイに魔法を撃つ暇を与えぬよう、残りのメンバーも前進して一斉に距離を詰めていた。
もっとも速く到達したのは、瞬発力に優れるティアだった。
飛び込んでからの強烈な正拳突きに、間髪を容れず二段蹴り。それはすべて正確にダヴィドレイを捉えた。
シドウとしては、その♂ツ能性は少し考えていた。
正拳突きと二段蹴り一発目の右足で体がぐらつくと、左足で放った仕上げの上段蹴りにより、ダヴィドレイの頭部はいとも簡単に吹き飛んだ。
そして、血が出ないのである。
「え!?」
ティアのほうはまったく予想していなかったのだろう。驚きの声。
すぐに全員が集まる。
「アンデッドだったんだ。びっくりしちゃうね」
「一見アンデッドには見えませんでしたね」
ソラトとアランがそれぞれ驚きを口にする。
ダヴィドレイの体はミイラのような干からびたものではなく、眼球にも光があった。肉体をほぼ完全に保ったままアンデッド化していたようだ。
首が簡単に
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