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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第51話 学問の禁忌(1)
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して以来、たびたびこのような光景が見られていたが、どうやらデュラが今でも「大魔王様」と呼んでいることが彼は嬉しいらしい。

 シドウは見抜けなかったのだが、同じくソラトのニンマリに気づいたティアはすぐに察したようで、シドウの耳元で説を披露していた。その後の「大魔王様」という言葉へのソラトの反応を見るに、どうやら正解だったようだ。

 人間であり、大魔王は敵であったはずの父。彼にとってそれがなぜ嬉しいのか。

「自分のパートナーがさ。いなくなった偉い人のこともちゃんと尊敬し続けてる。それが嬉しいんだと思うよ」

 ティアはそれも考察済みだったようである。



 大魔王の間の大きな扉は、最初から開いていた。
「念のためだ」と言って、デュラが先頭になって通る。罠を警戒してのものだ。

 広い。
 扉から玉座に向かって、幅広の絨毯が伸びている。
 そして玉座ではなく、部屋の中央に騎士風の男が立っているのが見えた。
 全員の緊張は高まる。

 扉をくぐった際に、特に目に見える異変はなかった。
 だが、目に見えない異変はあった。

「鼻が利かなくなった」
「そうですね。何か変な匂いが床から出て……いや、出しているのでしょうか」

 デュラとドラゴン態のままのシドウが、前方を見たまま小声で確認し合う。
 ティア、アラン、ソラトの三人も視線をチラッと交換した。こちらのほうは何も感じないという確認である。人間には感じない匂いを充満させているのだと思われた。

 デュラとシドウが先頭に立つ。
 飾り気などはないが、とにかく広い。
 しかも明るい。それまでの部屋や通路も暗くはなかったが、ここはさらに明るい。
 部屋の左右に壁がないのだ。

 壁があるはずのところは、柱が広い間隔で並んでいる。
 城がグレブド・ヘルの中で最も高い場所にあるため、その先にあるものは空。
 日が傾いてきているのか、やや橙の成分が混じってきていた。

「なんだ? 全員無傷だな。するとエリファスや他の者たちは死んだか」

 騎士風の男がしゃべった。旧魔王軍の公用語ではなく、人間の言葉だ。

「ほう……懐かしいのがいるな。ドラゴン族の族長の娘よ」

 男の視線の先がシドウの母・デュラであったことで、この男が旧魔王軍の学者、そして大魔王復活計画の首謀者――ダヴィドレイであることがどうやら確定した。

 まだ壮年まではいかないように見えた。彫刻のように整った顔。後ろに流されている茶色の長髪。上下赤黒い色の服。濃い茶色の高級そうなマント。銀の胸当てを着用しており、腰には剣を下げていた。

 耳の尖り具合で人間でないことはわかる。だが、その皮膚がくすんだ泥色をしていることがシドウには気になった。人型モンスター・アルテアの
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