最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第50話 人類代の終わり
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こと言われたから」
肘で側腹部の鱗をつついてくるティアの顔に、責める色はない。
「言われたことをすべて受け取り、考える癖……直りそうな感じはなさそうですね。でもそれが欠点ではなく、長所になる世界になればいいと思いますよ」
アランが浮かべているのも、いつもの微笑。
「とりあえずさ、シドウは不要じゃないよ。わたしが保証する。歪かどうかはわたし勉強してないからわかんないけど、人とドラゴンがちゃんと好きで夫婦としてくっついて生まれたんだから、シドウはこの世界に居ていい動物ってことなんじゃないの。ねえ?」
ティアが同意を求めた先は、デュラとソラト。
デュラは静かにうなずき、ソラトは「そりゃもちろん!」と大袈裟に何度もうなずいた。
シドウは仲間に、両親に、感謝した。
「冷気で打ち消したか」
アンデッド特有の響く声。今度は背の低いほうが杖を掲げていた。
杖が振り下ろされる。同時に、大量に湧いていた鎧アンデッドが一斉に襲い掛かってきた。
間髪を容れずにアランが前方へ広範囲の炎を放つ。
鎧アンデッドは動きながら、それぞれが手のひらを炎に向けるように構えた。冷気を出したのであろうことはわかった。生前は魔法が得意なアルテアの民だったのかもしれない。
しかし、赤髪の青年の魔法とは威力が違いすぎた。
炎を受けた個体はすぐに灰化し、鎧だけが金属音を立てて床へと落下した。
前方のアンデッドのうち魔法の直撃を免れた個体や、後方や側方の個体も、次々とティアの蹴り技やデュラの爪、ソラトの剣技の餌食となっていく。
アランとティアが、鎧アンデッドの処理をしながらシドウに向かってうなずく。
シドウもそれに応えると、前方を目指した。
かつては人間とアルテアの民だった二名。今はアンデッドとなった二体へ――。
人間よりも進んだ生物。
いつかは現れるのかもしれない。
でもそれはアンデッドではない。そうであってほしい。
今、この地上でもっとも繁栄しているのが人間であることは間違いない。
だがその人間は新生命体であるアンデッドが登場するための過程にすぎなかった?
そんなのは寂しすぎる。
そう思いながら、シドウは爪を振った。
例によって考えながらなので、攻撃は決して鋭くない。それでもアンデッドを粉砕するには十分だった。
背の低いほうのアンデッドが砕け散る。
背の高いほうは、杖を掲げて何か魔法を放とうとした。
が、シドウの後方から鋭く飛んできた小さな氷球が、その杖を弾き飛ばす。アランの援護射撃だ。
背の高いアンデッドに、慌てるそぶりは見られない。
だがシドウにはわかる。彼らは冷静にしかなれないんだ、と。
恐慌、狼狽、絶望などという感
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