最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第49話 どちらも野生動物(2)
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こなっていた。だが、実験で作り出したオーガとのハーフは、知能が低すぎて使い物にならなかったのだ。そこでダヴィドレイ様はハーフオーガをもう一体作り、それとさらにアルテアの民とかけあわせた。それがお前ということらしい」
血を滴らせながらエリファスが狼狽する。
「おれの母親は死産っ、父親は病死と聞いたぞっ」
「ダヴィドレイ様から聞いたが、どちらも嘘らしい。純粋なアルテアの民だったお前の母親も、ハーフオーガである父親も、実験で無理に交配させられた。そして実験後は口封じのため処分=Bそれが真実だ」
「まさか……そんな……」
愕然とするエリファスだったが、体は無情にも変化が続いていた。
体色は完全に血と同様の緑暗色となっていた。体の膨張もとまらず、もともと高めだった身長も、元の一・五倍はあろうかというほどまでに伸びていた。
「お前は変身できないはずだそうだが。まあ、こんなこともあるということか」
髪の色も銀から濃い緑灰色に変化すると、エリファスは両手で頭を押さえた。
「なんだ……なんだ……なんだこれは……頭ガ……トケテ……イク……」
エリファスがふたたび床へと倒れた。
しばらく言葉を発しながらのたうちまわっていたが、やがてその言葉は意味不明なうめきに変わっていき、言葉の体をなさなくなっていった。
「やはりオーガの性質が覚醒すると知能は保てないか。もともとアルテアの民とオーガは相性が悪かったのだろうな」
出来損なった生物に用はない。
そう言わんばかりに黒い眼窩を向けると、背の高いほうのアンデッドは手のひらをかざした。
「あ、待――」
シドウの声は間に合わなかった。
エリファスの体が爆音とともに吹き飛ぶ。離れた柱に打ち付けられ、そして床に落ちると動かなくなった。
一瞬だけアンデッド二匹を睨んだシドウだったが、すぐに視線を落とした。
そしてドラゴン姿のまま、小さくつぶやく。
「俺……初めて変身したとき、頭がかき混ぜられるような、そんな感じがした」
ドラゴン態の小声は、両親が拾うには十分な声量だった。
「初めてドラゴンに変身したときは三歳だったか。確かに少し様子がおかしかった」
「それ、僕も覚えてるよ。少し変だった」
デュラとソラトの言葉を聞き、やはり、とシドウは思う。
「そのときの記憶、少しだけ残っています。エリファスが言っていたような、頭がどんどん溶けていくような感じだったかもしれません。でも目の前の母さんと父さんの姿を見たら、それがなぜか落ち着いたような……」
一歩間違っていたら、自分もああなって、戻らなかったかもしれない。
知能が高いドラゴンとそうでないオーガの差が出たのか。両親がいたかどうかの差が出たのか。
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