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自然地理ドラゴン
最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第49話 どちらも野生動物(2)
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 倒れたエリファスに向かって近づこうとしたアランだったが、足をピタッととめた。
 不吉な音。
 なにやら前方の床に小さな石の破片が当たっている。その音だった。
 それは上から落ちてきていた。徐々に大きくなっていく。

「皆さん、少し下がってください」

 アランが上を見上げながら全員に指示を出す。本人も下がった。
 上からがれきが降ってくる。音もどんどん大きくなる。
 ついには轟音とともに、直前までエリファスのとまっていた柱が崩壊した。

 この部屋の高い天井を支える長い柱。そのがれきの量も多い。
 アランは粉塵を防いだマントをひるがえすと、デュラのほうを見て微笑んだ。

「壊れましたけど?」
「すまない」
「以後は威力を加減しますよ。さすがに天井が落ちてきたら全員死ぬでしょうから」

 またがれきの音。
 今度は上ではなく前。倒れていたエリファスだ。

 大剣を杖のようにして一度起き上がったが、そこまでだった。
 そのままよろめき、後方にあった柱に衝突し、そのままもたれかかった。
 同時に手から大剣が落ち、鈍く乾いた金属音を立てた。

 鎧から覗く二の腕や大腿からはいくつもの血の筋が見え、足元には血だまりが急速に拡大していた。
 失血と体力喪失によって戦闘不能に陥ったのは明らかだった。

「お前は……何者だ……」
「さっきあなたがおっしゃったではありませんか。ただの人間ですよ」

 エリファスは自嘲的な笑いを浮かべた。

「ははは。おれはいったいなんなんだ……ドラゴンにも勝てない、人間にも勝てない。おれはなんのために――」

 そこで言葉が急にとまった。
 彼の視線は、自身の手。そこから滴る、血の色。
 シドウ一行も固まった。
 赤いはずだったそれが、緑暗色に変わっていったからである。

「なんだ……? この色は……」

 彼の驚く声。しかし変化はそれだけではなかった。
 防具が外れ、床に落下した。体が膨張を始めたのである。
 体色も急速に緑がかかっていく。

「な、なんだっ……これはぁっ!」

 上方へ放った彼の大きな叫びが、高い天井へ悲痛に響いた。

「お前は純粋なアルテアの民ではない。オーガとのクォーターだ」

 その冷たく響く声は、エリファスの後方から現れたアンデッドのものだった。
 エリファスが後ろを見た。

「どういう……ことだっ」

 アンデッドは二体。
 どちらも黒いローブを纏い、宝玉の付いた杖を持っていた。ローブのフードは片方だけがかぶっている。今しゃべったのは顔を出している背の高いほうのアンデッドのようだ。

「昔、ダヴィドレイ様はアルテアの民の非力さを埋める実験として、大型モンスターであるオーガとの交配をお
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