ちいさなしまのおはなし
ムゲンマウンテン
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と冷たい。つまり丈とゴマモンはベッドに入っていないということだ。
……ならば丈は、何処に?
『ソ、ソラ!ちょっと来て!』
テントの入り口で、ピヨモンが空を呼ぶ。
大きな声だったので太一達が起きてしまう、と空は注意しようとしたのだが、テントの入り口で待機していたピヨモンとブイモンが、視線を地面に向けている。
どうしたのだろう、と空と大輔がテントの入り口に行くと、これ、とピヨモンとブイモンが地面を指さす。
そこには、几帳面な字でこう書かれていた。
──すぐに戻る。
この場を動かず待っていてくれ
丈
家族に引きずられる形で医者を目指している丈は、勉強こそできるもののスポーツはてんでダメという、典型的ながり勉くんである。
暇さえあれば机にかじりつき、教科書や参考書と睨めっこをしていることが多いものだから、国語や算数の成績はいいが、体育は5段階評価中1以上を取ったことがなかった。
別に医者になるのに体育は必要ないし、などと強がったものの、今ほどそのことを後悔したことはないだろう。
運動はできないでも、せめて体力はつけておくべきだった。
だが勉強の息抜きとして参加したサマーキャンプで、誰が誰も知らない大冒険を繰り広げることになるなんて思おうか。
ごつごつとした岩肌の山道は当然、舗装なんて親切な手入れはされているはずがなく、デコボコとしていてとても歩きにくい。
キャンプのプログラムでも山登りはあったが、飽くまでも人の手が加えられた安全な山道のハイキングであり、1歩歩いただけで足を取られるような岩の道ではない。
子ども達が履いている靴も、長距離の移動に適した靴ではあるものの、こんなごつごつした岩肌の道なんか歩いて、耐えられるだろうか。
自分達の世界に帰ったときにボロボロになっていたら、母に何と言い訳をすればいいのだろう。
「ぜぇ、ぜぇ、うぇ……」
運動不足、慣れない山道、その他もろもろ積み重なってまだ4分の1も登っていないのに、丈の息は切れ始めている。
少し休んでは歩き、また少し休んでは歩きの繰り返しで、前に進んでいる感覚がなかった。
この調子では、頂上にたどり着く前に丈の書置きに気づいた子ども達が追いかけてきて、追いついてしまうだろう。
「うう、それにしても、ぜぇ、大きな山だな、はあ、はあ……」
『何だい、はあ、もう根を、へぇ、上げたのかい……ぜぇ』
「……君にだけは、うえ、言われたくないよ」
まだ頂上は遠い。見上げると眩暈がしてきそうだが、ぐっとこらえる。
『ま、いざとなったら、よいしょ、オイラが手を貸してやる、よっと!』
「……それ手だったの?」
思わずと言った様子で呟けば、ゴマモンがじとりと睨みつけてきたので、慌
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