ちいさなしまのおはなし
ムゲンマウンテン
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丈がいない。テントをもらった初日、下級生達が寝るベッドを選んでいるのを見守って、余ったベッドで寝ることになった丈の姿が、なかった。
明日をどうしようかと議論していた上級生の会話を知らない大輔とブイモンは、大輔の前にトイレにいるのかな、ってぼんやり考えるだ。
それよりも早く尿意をどうにかして、身体と脳が完全に覚醒する前にベッドに戻らなければならない。
お家でも時々尿意が勝って夜中にトイレに駆け込むことがあるのだが、トイレが終わると必ずと言っていいほど目が冴えてしまう。
眠いうちに戻りたいのに、トイレが終わると頭がすっきりしてしまい、再び眠るのに時間がかかってしまう。
結果的に、翌朝寝坊してしまう。
よくお姉ちゃんに遅くまでゲームしてるんでしょ、ってからかわれているが、とんだ風評被害である。
……確かに止め時が分からなくて、夜中までゲームをして遊んでしまうこともあるけれども、たまにだ。いや、時々?週に1回ぐらい?
テントを出る。濃紺の空はいつの間にか白んでおり、もう夜明けが近いことを報せていた。
大きな欠伸を1つ落とすと、それを拾ったブイモンも一拍遅れて大欠伸。
シャワーとトイレが1つになっている、3つめのテントに向かうと、同時に誰かが出てきた。
空とピヨモンだった。
「あら、大輔。おトイレ?」
「ふぁ〜い……」
そして、あれ?って気づく。ぱっちりと目を覚ます。
トイレに行きたくて覚醒しかけて大輔の中でふらついていた意識が、ぴったりとはまる。
「丈さんは?」
「え?」
眠たかったけれど、テントの中の丈のベッドに丈とゴマモンがいなかったのは、ちゃんと覚えている。
もしかしてトイレにいるのかなってぼんやりと考えていたから、覚えている。
だが実際トイレから出てきたのは空だ。
だから大輔はそのことを空に伝えた。空は困ったような表情を浮かべる。
「見間違いとかじゃ、ない?」
「そんな、絶対見間違いじゃないっすよ!な、ブイモン!」
『そうだよ!そりゃ、確かに眠かったけど、ぜーったい見間違いじゃないって!疑うなら来てよ!』
「そうだ、見てもらえばいいんだ!空さん、来て!」
疑っているわけではなく、確認のために聞いたのだが、大輔とブイモンはそうは捕らえなかったらしい。
大輔が空の腕を引っ張って、男子のテントに連れていく。ピヨモンとブイモンが後を追う。
空は一瞬躊躇したが、大輔が構わずぐいぐい引っ張るので、仕方なしにテントに足を踏み入れた。
太一や治に何か言われたら、大輔に引っ張られたのだと言い訳しよう。
しかしそんな空の思考は、彼方へと吹っ飛ぶことになる。
ここ、ここ!って大輔が指さしたベッドはもぬけの殻であった。
どうやらこのベッドが丈とゴマモンのものらしい。
触ってみる
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