最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第46話 種族の壁
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、嫌だと言ってもやめてくれなかった」としか答えようがなかった。
「いや、そんなことはないと思いますよ」
アランがティアの説に異を唱える。ソラトはアランともしっかりと会話を交わしており、特に現在はわだかまりなどもないようである。
「私は性格も似ている部分があるように思いますけどね」
「ほんとー?」
その後も性格談義は続いたが、シドウは特に口を挟まなかった。
前方には、巨大な白い岩のカーテン。
グレブド・ヘル。周囲を断崖絶壁に囲まれた卓状の高地。
翼のない動物は、この地の内外を行き来することが難しい。
人間も例外ではない。大魔王討伐のために乗り込んだ勇者一行や、好奇心で挑戦する冒険者や学者など以外、立ち入ったことはないはずである。
その不気味な姿。
『魔のカーテン』
『魔の机』
人間のあいだでは大魔王が登場するはるか昔よりそう呼ばれ、畏怖の対象であったという。
* * *
「申し訳ありません」
旧魔王城の『大魔王の間』。
赤いじゅうたんの上で立ったまま頭を下げたのは、銀色の髪を後ろだけ束ねた騎士風の青年――エリファスである。
「よい。きっと仕方ないのだろう」
玉座の前に立つダヴィドレイ。ため息まじりに彼がそう言うと、エリファスはすぐに頭をあげた。身に着けている金属の鎧と赤いマント、そして背中に背負った大剣が、先の戦いの汚破損のせいで不規則に光る。
「お前は勇者一行から大魔王様をお守りすることを想定して育てられた戦士。ドラゴンと戦うことは想定されていなかったはずだ。お前には悪いが、シドウというハーフドラゴンに敗れたというのはそこまで意外な結果ではない」
ダヴィドレイの立つ位置は以前と同じで、玉座の前。
いや、正確に言えば、玉座の前に置かれている巨大な棺の前、である。
「我々の計画を知ってしまった以上、近いうちにそのハーフドラゴンの少年たちがここまでやってくる可能性が高いだろう。それまでにお前はさらなる戦闘能力の向上が必要だ。お前にはアンデッドになって敵を迎え討ってほしい」
「……ご冗談を。私は惨敗したわけではありません。再戦すれば結果はわかりませんよ」
エリファスとしては、速さはシドウのドラゴン態を上回っており、力についてもドラゴンの鱗を突き破るには十分であることが証明できたと思っていた。
「もう一度生身のままチャンスを頂きたいものですな」
「お前といえども、難しいだろうな」
「何故そう言い切れるのです?」
「……」
後ろを向き、大魔王の遺骨が納められている棺を見下ろした。
ダヴィドレイは続ける。
「お前が先の戦いで当たった壁、それは紛れもなく種族の壁≠セ」
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