最終章 大魔王の夢 - 不毛の大地グレブド・ヘル -
第46話 種族の壁
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「やっぱり空はいいね!」
大きく伸びをしながらティアがそう言う。
当たる風は相当に強いが、命綱付きなので彼女の姿勢もかなり開放的だ。
「もすうぐ高度をあげる予定です。二人ともよろしくお願いします」
「はーい」
「わかりました」
飛行を続けるドラゴン態のシドウは、背中に乗るティアとアランに注意を促した。
その声は横を飛ぶ母親デュラにも聞こえているはずではあるが、念のため、予告が済んだ旨を伝えた。
そのデュラの背中には、父親ソラトが乗っている。
当初、デュラは助言を授けるだけのつもりであり、シドウも同行を求める予定はなかった。
それをひっくり返したのは、デュラの夫でありシドウの父、ソラト・グレースである。
「デュラも行ったほうがいいよ! なんとなくそんな気がするんだ」
「そうなのか?」
「うん! 僕も一緒に行くから。行こう!」
というやりとりがあったのである。
論理性の欠片もないソラトの提言ではあったが、デュラがそれを受けて考えを変えたため、両親は二人とも来ることになった。
シドウの兄姉たちについては、山にとどまって留守番ということになっている。
山を空けてしまうのはまずいという理由もあるが、彼らはデュラ討伐未遂事件の際にアランによって瞬殺≠ウれており、彼に近づくことを怖がっていたためでもある。
ただし、事件後にアランが席を外している間、「シドウが女の子を連れてきた」と兄姉一同がティアを囲んで観察を始め、シドウが慌てて止めに入る一幕もあったため、精神的ダメージは深刻というところまではいかないようである。
横を飛ぶデュラが、シドウに目で合図をした。
デュラが高度をあげていく。
シドウもそれに続いた。
グレブド・ヘルはこの大陸のどの山よりも高いところにある高地。徐々に体を慣らしていこうという作戦である。
「しっかし顔似てるよね。あんたのお父さん」
ティアが何やら父親について言及をしてくる。
「見かけは完全に父親似かあ。性格は似てないっぽいのに」
デュラ討伐未遂事件の日の夕方。山に帰ってきたソラトは事件のことを聞くと、かつて冒険者として最上位の『頂級冒険者』だったとは思えないほど取り乱した。が、デュラに「もう問題はない」と言われると瞬時に治まっていた。
また、その日の夕食ではティアに対し、「シドウくんとはいつ結婚予定なの?」といきなり言い出し、シドウとティアが盛大にむせる一幕もあった。
ティアはそんなソラトの切り替えの早さや突拍子の無さを見て、父子は性格が似ていないと判断しているようだった。
ちなみに、ソラトがシドウを「くん」づけで呼んでいることについてもティアは問題視していたが、シドウとしては「ずっとそうで
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