第1部
アッサラーム〜イシス
不思議な歌
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ロズさんと別れの挨拶をしたあと、私たち三人はユウリと別れ、城内の入り口から通じる大広間へと足を運んだ。そこは一般人も自由に出入り出来る場所で、壁のいたるところに金を掘った彫刻や、ガラスでできた置物などが飾られている。この大広間が一般開放となったのはつい最近であり、今の女王様のご意向でそうなったのだそうだ。
大広間は雨宿りのためか、数人の一般客と侍女らしき女性が歩いていた。広間の中央は庭園になっており、噴水と、その周りに花壇が敷き詰められ、その真上には、色とりどりのガラスの窓が模様のように張り巡らされていた。
「うわあ、きれーい……」
ぽかんと口をあけたまま、私はつい口にしていた。
「あれね、ステンドグラスって言うんだよ」
「へえ。シーラよく知ってるね」
今まで家の窓しか見てこなかった私にとって、ステンドグラスというものは衝撃的だった。振り向けばナギも目を丸くしながらそれを見上げている。
「そういえばナギ、今回は随分大人しいね。女王様を見ててっきり興奮してると思ったのに」
「おいこら、お前オレを動物か何かと思ってないか?」
私が疑問を呈したら、ナギが口を尖らせながら答えた。
「いや、そんなことはないけど……ビビアンさんのときと反応が違うなと思って」
「あの女王様は完璧すぎるんだよ! 確かに誰もが惚れそうになるくらいの美女だけどさ、なんていうか、逆に近寄りがたい雰囲気なんだよな。やっぱりオレの推しはビビアンちゃんだよ!! あの美しさと親しみやすさとのギャップが……」
まずい。どうやらスイッチが入ってしまったらしい。シーラが「関わらない方がいいよ」と目で訴えてきたので、そっとしておくことにした。すると、
にゃあ、にゃあ。
「?」
どこかで、猫の鳴き声が聞こえる。声のする方に視線を移すと、子猫が私の足にすり寄ってくるではないか。
「かっ、可愛い〜〜!!」
思わず目をハートマークにして、私はフワフワの白い毛並みの子猫を抱き上げた。よく見ると、噴水の周りに何匹もの猫が群がっている。人に慣れているのか、私たちが近寄ってきても全く逃げる気配はない。
「あっ、あっちにねこちゃんいるよ〜」
「待て待てー」
すると、猫じゃらし代わりの草きれを持った小さな女の子たちが、猫を追いかけてこちらへやってきた。草にじゃれようとする猫と、それを追いかける女の子たちが、噴水の周りをグルグル回って無邪気に遊んでいる。
「なんかこういう光景見ると、旅のこととか忘れちゃいそうだねえ」
「そーだね〜。このままずっとこうして眺めてたいねえ」
「お前ら、こんなところでのんきに油売ってんなよ。ったく、なにもしないで待ってるのが一番苦手なんだよ」
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