第二百八十話 テストの中もその八
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「最近になって続編が見付かったんだ」
「そうだったの」
「別府の方に行くんだ」
「九州よね」
「温泉で有名なね」
「そこに行くのね」
「そう、だからね」
それでだ。
「あそこで終わりじゃなかったんだ」
「それは知らなかったわ」
「最近になって見付かったから」
その続編がだ。
「ずっとあるって誰も知らなかったんだ」
「それが見付かって」
「それで本に出たよ」
そうなった。
「ちゃんとね」
「そうだったのね」
「大阪を離れるんだよね」
「ずっと大阪にいると思ってたわ」
「それが違うんだ」
「じゃあ今度読んでみるわね」
「いいと思うよ、その続編も面白いから」
別府に行ったお話もだ。
「あとうちの図書館には全集もあるし」
「織田作之助の」
「色々な人の全集あるけれどね」
芥川や太宰は当然あるし坂口安吾や志賀直哉のものもある、何故か志賀直哉全集は長い間出ていなかったらしい。
「その中にね」
「ちゃんとあるのね」
「それも一番新しいのがね」
この学園の図書館にはあるのだ。
「だからよかったら読んでね」
「それじゃあね」
「もうあの人も亡くなって七十年以上経つけれどね」
「太宰と同じ時代の人よね」
「同じ無頼派でね」
坂口安吾や田中英光もそれに入る。
「対談もしてるよ」
「そうなの」
「うん、ただね」
「ただ?」
「その対談のすぐ後に織田作之助亡くなってるんだ」
カレーの食堂に向かいながらこの話もした。
「実は」
「そうなの」
「うん、大阪から東京に行ってね」
その頃書いていた作品の取材で行ったのだ、そのついでに太宰そして坂口安吾との対談を行ったのだ。
「それでね」
「確か結核だったのよね」
「そう、その結核でね」
まさにその病気のせいでだ。
「亡くなったんだ」
「そうだったわね」
「東京に行ってね、太宰や坂口安吾と対談して」
「そのすぐ後になのね」
「亡くなったんだ」
まさにそうなったのだ。
「結核が急に悪化して吐いた血が喉に詰まって」
「それでなの」
「亡くなったんだ」
「残念なことね」
「今は結核は助かるからね」
もう死ぬ病気じゃなくなっている、少なくとも日本ではそうだ。
「余計にね」
「今じゃ助かったと思うと」
「余計に残念だよ」
「もっと長生きしていい作品残せたわね」
「そうだっただろうね」
僕もこう思う。
「カレーだってね」
「もっと食べられたわね」
「自由軒のカレーをね」
好物だったこのカレーをだ。
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