この手で掴む“いつか”(マリア・カデンツァヴナ・イヴ誕生祭2020)
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マリアが車を降りると、そこには……海面を照らす月があった。
この瞬間の為に、ツェルトが絶好のロケーションで月を見上げられる場所として探し当てた場所だ。
「綺麗……」
思わずマリアは感嘆の溜息を漏らす。
彼女の肩に腕を回し、ツェルトは呟いた。
「知ってるか? 日本では、女性を口説くときにこう言うらしいぞ。『月が綺麗だな』ってさ」
「ッ!?」
「女性の美しさを、月に準えた比喩表現らしい。でも、俺からしちゃあ……月に照らされたマリィの方が、何倍も綺麗だよ」
「それって……!?」
慌ててツェルトの方を見るマリア。
彼の瞳は、真っ直ぐにマリアの顔を見つめていた。
「そんな君の美しさを際立たせるプレゼントだ。誕生日おめでとう、マリィ」
マリアに手渡されたのは、とあるアクセサリー店の紙袋。
中身はラピスラズリとペリドットのブレスレット。どちらもマリアの誕生石だ。邪気を払う聖なる瑠璃石と、夫婦の幸福を意味する橄欖石。
アクセントとして、間にクォーツを挟むことで運気を更に向上させている。
「ッ! もしかして、今日一日休みにしたのって……」
「そういう事。マリィの誕生日を祝うためのサプライズだ」
「ようやく引っかかってたものが取れたわ……。そういう事だったのね」
「不満だったか?」
途端にわざとらしく、ツェルトの眉が下がる。
「いいえ……最高の一日だったわよ。本当にありがとう」
そう言ってマリアは、ツェルトの唇にそっと口付けた。
「ま、マリィッ!?」
「お返しよ。ここで普通に答えたら、あなたの思うつぼでしょう?」
「はは……マリィらしいな」
クスリと笑うマリアに、ツェルトは照れ臭そうに後頭部を掻いた。
「マリィ……それ、嵌めてみてくれるか?」
「いいわよ。……これでいいかしら?」
「ああ……思った通り、よく似合っている」
「そう? なら、今度からオシャレする時に使ってみるわね」
「お守りとしての効能もあるから、毎日嵌めてていいんだぞ?」
「そうなの? 花言葉には自信あるけど、宝石言葉にはまだまだ疎くて……」
「そ、そうか……。なら、帰りの車の中で教えよう。皆、待ってるからな」
幸せそうに微笑みを交わし、二人は帰路に就いた。
(あの宝石言葉は、今は伏せておこう。いつか、その時が来たら──)
マリアとセレナ、そして自分。
いつか三人で掴む未来に思いを馳せながら、ツェルトはハンドルを握るのだった。
この後、帰って来たマリアに調と切歌、そしてセレナからのサプライズがあったのだが……その話はまた、別の機会に。
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