舌戦、舌戦、また舌戦・3
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資源の目処が立たないのがネックなんでしょう?アレは」
大臣のめがカッと開かれる。顔にでかでかと『何故知っている!?』と書かれているが、建設予定の鎮守府の数と国内に備蓄されている資源の量さえ知っていれば簡単な計算だ。もし仮に計画通りの数の鎮守府を設営した場合、日本の石油は5年以内に枯渇するだろうってのがウチの経理部門の試算だ。しかもこの5年以内という数字は、今の石油の輸入量を維持しつつ民間の分を全て軍部に回した場合の計算だ。当然そんな真似が出来る筈も無く、石油の枯渇はもっと早い時期になるだろう事は明白だ。
「……………………」
暫し黙り込む大臣。この古狸が本物の『政治家』ならば、間違いなくこの提案は飲む。幾ら目の前の相手が腸が煮えくり返る程に嫌いな相手でも、国益の為ならば笑顔で握手する。本物の政治家ならばそれくらいの腹芸と顔芸は持っているだろう。やがてふぅ〜っと長い溜め息を漏らし、大臣が顔を上げた。その顔には諦観の色が窺える。
「やられたよ、金城君。大した政治屋だ」
「では、あの嫌がらせの様な書類の絨毯爆撃は止めて頂けますね?」
「あぁ。ところで君は、政治家に興味はないかね?ん?」
「…………はい?」
「君の様な悪どい人間こそ、このような国難の際にはトップに立つに相応しいと私は考えている。どうかね?」
「それはつまり……私に総理大臣をやれと?」
「そう話したつもりだが?」
「有り得ませんね」
「そうか……残念だ」
どうせ良いように利用して、最後にゃその悪どい部分を追求して総理の椅子から降ろそうなんて考えてやがるんだろうな、この狸爺めは。
「では、今日の会話が互いに実りある物である事を切に願います」
「あぁ、お互いにな」
俺と大臣は握手を交わし、何事も無かったかのように内務省を後にする。
「さぁて、晩飯は何にすっかな〜」
糞真面目な話してたら、腹が減った。
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