舌戦、舌戦、また舌戦・3
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渡したのは大きめの茶封筒。赤いインクで『部外秘』と『classified』の判が捺されている。中身は数枚のA4サイズの書類。綴じられたそれらを1枚、また1枚と捲っていく度に大臣の顔が驚愕に歪んでいく。
「まさか。まさかこんな……!」
「お気に召していただけましたかねぇ?」
提督は厭らしさを微塵も隠さない笑顔を大臣に向けた。大臣の手から書類の束が落ちる。その表題には『ブルネイ近海の海底資源の調査結果及びその採掘権に関する覚書』とある。
「こんな、こんな馬鹿げた物をどうやって」
「おや、ご存知でない?こう見えても俺ぁブルネイの国王陛下と個人的に懇意にしてましてねぇ」
現在人類の利用している金属や石油などの化石燃料といった資源は、陸上で採掘できる物のみとなっている。深海棲艦との戦争が始まった当初に海上に存在した資源採掘プラントはその悉くが破壊され、逆に深海棲艦の資源基地となっている物まである。そんな中、ウチはブルネイ政府からの要請を受けて海底資源の埋蔵量の調査を実施。その結果、ブルネイの近海には中東の産油国を優に越える量の石油やLNG(液化天然ガス)が眠っている事が判明。その採掘権をブルネイ鎮守府の提督・金城零次に譲渡する事を内密に決定していた。
「莫大な国益をもたらす海底資源の採掘権を、個人に譲渡だと!?馬鹿な、ありえん!」
「それが有り得るんですよ、これが。まぁ持つべき物は国王の友人って事ですかね?」
種明かしをすれば海底資源の調査を依頼してくる様に国王に頼んだのも俺なんだけどね〜。はいはい、マッチポンプマッチポンプ。
「大体、今のご時世資源採掘プラントを海上に建てようったって防衛用の戦力が無いとどうにもならんでしょうが。絵に描いた餅にする位ならばそれを成し遂げられそうな奴に売って、税金取った方がマシだって奴も言ってましたよ」
「実現可能なのか?」
「何処からも何も妨害を受けなければ、恒常的に防衛用の艦隊を派遣する事は可能ですよ?なんだったら、プラントに隣接してメガフロートを増設してそこに鎮守府を設営すればいい」
人員は俺の息の掛かった奴を潜り込ませてもらうがね。
「……何が目的だ?」
「だからさっきも言ったでしょう?この計画を成功させるには、『何処からも』『誰からも』『何の』邪魔もされない事が重要だって」
アメリカとウチが勝手にナシを着けて以来、急激に増えた書類仕事の山。これのせいでウチの事務処理能力はパンク寸前、日常的な艦隊運用すら覚束なくなっている。その妨害工作の大元が内務省であると嗅ぎ付けた辺りから準備を開始。最終的な目的は『内務省に妨害を止めさせる事』、それに尽きる。
「防衛圏構想、読みましたよ。悪くはないが……維持する
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