【 転 】
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鶴は真田と顔を見合わせた。
「どういうことだ。」と美鶴が眉をひそめてつぶやいく。
「つまり、こいつも幾月本人ではないということだろう。幾月は死んだんだ。」
真田が答えた。
「このパレスの主は幾月ではないということなのか・・・それならばいったい・・・。」
その時、突然、玉座の背後にある豪奢な扉が、爆発音とともにふっとんだ。重たい扉が地響きを立てて倒れる。同時に扉を失ったその奥からモルガナが転がってきた。
「モルガナ!」
倒れたモルガナに『彼』と ゆかり が駆け寄る。
モルガナが体を起こして叫んだ。
「気をつけろ! あれは・・・あれはオタカラなんかじゃねえ。宝箱に入ってたのはもっととんでもない何かだ。」
いっせいに振り向くと、扉を失った空間から、黒っぽい何か巨大なものが膨れ上がるように出てきつつあった。
「あれは・・・。」
その姿を見て『彼』が眉をひそめる。
「知っているの?」ゆかり が訊いた。
「いや、でも・・・なんだか見覚えあるような・・・。」
『彼』の表情が険しくなった。何かが頭に浮かびそうになるが、形にならずに消えてゆく。
やがてドアを抜け出したそのモノは、さらにぼこぼこと膨張し続けた。
それに伴い、ただならぬ威圧感が押し寄せてきて、全員が表情を引きつらせる。
【我はオイジュス。苦悩の神である。】
突然、頭の中に重々しい声が響き渡った。
その威圧的な声は人の恐怖心を揺さぶり、ゆかり は思わず震えが走る自分の体を抱きしめた。
「・・よく思い出せない。でも・・以前、戦った気がする。誰かと一緒に・・・そして倒したはず。」
『彼』が記憶をさぐりつつ声を洩らす。
【神は簡単に滅びはしない。】
『彼』の言葉に応えるように、再度声が響く。
いつしか見上げるほど巨大になった、大きさの異なる青黒い球の集合体。体からは更に次々と新たな球が膨れては消えている。その球の一つ一つに、目のようなものが一つずつ赤く光っている。
オイジュスと名乗ったそのモノは、ゆっくりうごめきながら前に進んでくると、そのままそこにうずくまった幾月をじわじわと飲み込んでいった。
幾月は身動きもせず、オイジェスの体にめり込んで姿を消した。
「何が目的だ。」
『彼』が叫ぶ。
【お前達の排除だ。】
オイジュスが重々しく宣言した。
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