【 転 】
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してその姿は、髪型から言って・・・
「えっ・・・あれって、まさか・・・美鶴先輩?」
ゆかり は茫然として声を洩らした。
「そのようだな。向こうには帽子をかぶっているやつがある。あれは順平だろう。こっちの少し小さいのは天田か・・・。おそらく俺たち全員分あるんだろう。」
真田も興奮を抑えきれない様子で言った。
自分たちが十字架にかけられた姿の銅像が飾られている部屋。不気味なことこの上ない。
「僕らが十字架にかけられたのって・・・。」
『彼』がそう言うと、皆の脳裏にあの日の出来事がまざまざと蘇ってくる。背筋が寒くなり、不安げに顔を見合わせた。
十字架は3つずつ向かい合うように壁際に並んでいる。その中央に、入口から赤いカーペットがまっすぐに敷かれていた。そして、その先の一段高くなったところに玉座はあった。
玉座の前に数人の人影が見える。
ふいに声が響いてきた。
「侵入者はまだ見つからないのかい? 馬鹿に手間取るじゃないか。そんなことでこの宮殿の治安が守れると思っているのかい?」
蔭から覗くと、おかしな扮装をした男が玉座に座ったまま、並んだ5体のシャドウ・アイギスに説教をしている。
「あの声・・・」『彼』がつぶやいた。
「まさか!」真田も驚きの表情が隠せない。
「やはり・・・幾月だ。しかし、あの男がなぜ!」
美鶴が絞り出すような声を出した。
彼らにとっては絶対に許すことのできない因縁の男。そして美鶴の大切な父を殺した張本人だ。
しかし幾月は死んだはずだ。それは確実なことなのだ。
一体どうなっているのか。美鶴はその場に飛び出したい気持ちをぐっと抑えた。
幾月はシャドウ・アイギス達に語り続ける。
「僕はね。この宮殿に賊が入り込んでると思うだけで、ゾクゾクしちゃうんだ。」
シャドウ・アイギス達が爆笑した。
「うわー、あの寒いギャグ。間違いないわー。」
ゆかり が顔をしかめる。
「しかも、ギャグに反応するよう、シャドウに仕込んであるみたいだね。」
『彼』もあきれたように声を洩らす。
「知ってるやつなのか?」モルガナが興味深げに訊いてきた。
「裏切り者よ。もともと私達の活動の顧問だったけど、実は私達を利用して世界を滅ぼそうとしていたの。美鶴先輩のお父さんはあいつに殺されたし、私達も危うく殺されるところだった・・・十字架にかけられて・・・ね。」
ゆかり が手短に説明した。
「そうだったのか・・・。」
モルガナは驚いたように美鶴に目を向ける。美鶴は思いつめたような険しい表情を浮かべていた。
「俺達の十字架の像も、幾月ならば納得がいく。しかしあいつは死んだはずだろう。死んでもパレスは残るのか。」
真田が不思議そうに尋ねた。
そう、そこが問題だ。美鶴もモルガナに目を向ける。
「いや、そんなはずはない。死ねばその人間の
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