ちいさなしまのおはなし
生真面目くんの憂鬱
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なぁ。雪なんて降られたらたまんないよ」
『何でさ?オイラは寒いのも雪も大好きだよ?』
「君は、ね。見れば分かるよ、寒いのは平気なんだろう?ガブモンも。さっきっから元気じゃないか」
でも僕達人間はそうはいかないんだ、って丈はゴマモンを抱き上げた。
「君みたいに寒さに適した身体をしていないから、これ以上寒くなったらまずダウンするのは大輔君達下級生だ。夜になるにつれてきっともっと気温も下がるだろうから、今日は早めにキャンプするべきだ。でも雪なんか降っちゃったら、それさえ難しくなる」
『テントがあるからいいじゃん?』
「だぁかぁら!そのテントを何処に設置するのって話!雪の上に設置するわけにはいかないだろう?ゲンナイさんがくれたものとはいえ、壊れたらシャレにならないんだから……」
『ふーん?』
「それに食べ物だ。ゲンナイさんはそこまで用意してくれなかったから、食料調達は僕達でしなくちゃ。まあ君たちが食べられるものとそうでないものを教えてくれるから別にいいんだけど、こう寒いと木の実が生っているのかさえ怪しいよ。探すのも苦労しそうだっていうのに、太一達はどうしてああ呑気でいられるんだか……」
『……さっきっからどうしたんだよ、ジョウ?何難しいこと考えてんだ?まだ起こってもいないことで心配したって、疲れるだけだよ?』
あのなぁ!って丈はついつい語気を荒げた。
「行き当たりばったりでどうにかなるって思えるほど、僕はお気楽じゃないの!ここは僕達の世界とは違うんだ、慎重になるのも仕方ないだろう?」
『だーいじょうぶだって!オイラがついてるんだから!』
「どっから来るんだ、その自信……とにかく、僕だけでもこれからのことはちゃんと考えてないといけないんだ、僕は1番年上なんだから……ゲンナイさんに頼まれた、この世界を救うっていう責務を果たして、みんなを無事に帰す義務があるんだから……」
険しい表情を浮かべながら、丈はゴマモンを抱きしめる腕の力を強めた。
白銀の世界である。
真っ白な絨毯が子ども達の前に敷かれており、緑の終わりを告げた。
遮るものが何もない雪原は、何者にもまだ踏み荒らされておらず、ただ美しい風景としてそこにある。
1歩踏み入れてみれば、さく、と新雪の音がした。
ほら見ろ、って丈は苦虫を?み潰したような表情を浮かべる。
丈が懸念していた通りになってしまった。
一面雪景色は確かに美しいかもしれないが、キャンプをするには不向きだしこのままだと体温と体力が悪戯に奪われるだけだ。
だからこそ、きちんと話し合いの場を設けなければならないのだが……。
「すっげー!雪だ!」
『ダイスケ!遊ぼう!』
「雪合戦しましょ!」
『やろうやろう!』
「パタモン、行こう!」
『待ってーケン!』
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