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レーヴァティン
第百六十五話 視察その十

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「ですが」
「値段がな」
「湯豆腐とはです」
「とてもだな」
「思えないまでに」
 そこまでだったというのだ。
「高かったです」
「そうだったな」
「京都で美味しいものはお金を出すことだと」
「学生にも言うからな」 
「そうした街ですね」
「京都は大阪や神戸から見ると上から目線だ」
 英雄は起きた世界のことを自分でも言った、だから『大坂』ではなく『大阪』になっているのだ。読み方は同じでも。
「それもかなりな」
「お高く止まっているとも言えますね」
「そしてだ」
「お料理についても」
「その様に言う」
 美味いものは金を出せ、とだ。
「実際にな」
「はい、ですが」
「金を出しただけの価値はあったか」
「素晴らしい味でした」
 南禅寺の湯豆腐、それはというのだ。
「まことに」
「そうだったのだな」
「左様でした」
「湯豆腐は普通に豆腐屋やスーパーで買ってだ」
 豆腐、そして昆布をだ。
「食えばな」
「安くつくぜよ」
 当季は笑って話した。
「まっことのう」
「何千円も出すなぞな」
「有り得んぜよ」
「それで美味く食えるがな」
「京都、こっちの世界の都はのう」
「そこが違うな」
「南禅寺のお豆腐はまた特別ぜよ」
 まさにというのだ。
「仕入れているお店が違うぜよ」
「そこの豆腐はだな」
「素材も造る腕も」
「そして水もな」
「最高級のじゃからのう」
 それだけにというのだ。
「普通の豆腐屋さんやスーパーのそれとは違うぜよ」
「そういうことだな」
「高いだけのもんがあるぜよ」
 当季はこうも言った。
「そういうことぜよ」
「成程な」
「まあおまんはそういう高いもんには興味はないか」
「起きた世界ではな、そしてこちらの世界でもな」
 その豆腐を食べつつ冬季に話す。
「やはりな」
「高いもんはか」
「興味がない」
「そうじゃな」
「というか贅沢自体にだ」
 これそのものにというのだ。
「これといってな」
「興味がないんじゃな」
「安くて素材の質が落ちるとされていてもじゃ」
「美味ければじゃな」
「それでいいしな、住む場所もだ」
「質素でいいんじゃな」
「夏は涼しく冬は暖かいとな」 
 それでというのだ。
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