第六十三話 悪霊の滝
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てもらったのよ。さ、身体を拭いてあげるわ」
エレオノールは、アニエスの所に来ると水の入った桶を床に置き、アニエスの身体を拭き始めた。
「……」
「……もう少し寝てなさい。後の事は隊長さん達がやってくれるわ」
「……分かりました」
アニエスが眼を瞑ると、十秒をせずに睡魔が意識を刈り取った。
眠ったアニエスの身体を拭き終わり、エレオノールは他の負傷者の世話をするべく、桶を持って立ち上がった。
エレオノールは、同情の眼差しでアニエスを見た。
「あんな傷で……あの娘、これからどうなっちゃうのかしら」
エレオノールの視線の向こう。アニエスの左頬には大きな絆創膏が張られていた。
数時間前に、治療の手伝いをした際に見えてしまった絆創膏の下の傷跡……エレオノールは妹分のこれからの人生を想像して暗澹たる気持ちになった。
……
次にアニエスが目を覚ましたのは、辺りが暗くなってからだった。
上半身を起き上がらせると、十分な睡眠と治療のお陰で何の痛みも感じなかった。
辺りを見渡すと、負傷者のうめき声が時折聞こえた。次にエレオノールの姿を探すと建物の端っこで毛布代わりの毛皮に包まって寝息を立てていた。
「外の空気が吸いたい」
と、独り言と言って立ち上がり、眠っている他の負傷者を踏まないよう足元に気をつけながら外へと出た。
外に出たアニエスは、目の前に飛び込んできた巨大な滝に圧倒された。
「わぁ……」
大河の水が滝つぼに落ち、舞い上がって雫になり、双月の光に彩られて幻想的に見えた。
アニエスは散歩がてら河の岸辺を歩いていると、後ろから気配を感じた。
「誰?」
後ろを振り返ると、見たことの無い先住民の少女がアニエスの後を着けていた。
「私? 私はアワサ。お客さんがウロウロしてるのを見たから、注意しに来たのよ」
「注意?」
「そこの河は水量も多いし、流れも急だから、死にたくなかったら近づかないで」
「あ、ごめん」
アニエスは岸辺から数歩後ずさった。
「私はアニエス。アニエス・ド・ミラン。貴女は?」
「アワサよ」
「それじゃ、アワサ。地質調査隊や私達を助けてくれてありがとう」
「どうって事ないわ。それにお礼なら、隊長さんからもう貰ったわ」
アワサは手をヒラヒラさせて、照れ隠しをした。
「じゃあね、ちゃんと寝ておきなさいな」
「何処へ行くの?」
「雷鳴の杖を採り採りに行くのよ」
「雷鳴の杖?」
「えっと、あ〜……確か場違いなナントカって隊長さんが言ってたわね」
「ひょっとそれ、場違いな工芸品?」
「そう、それ」
アワサの言葉にアニエス
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