ちいさなしまのおはなし
おもちゃの町
[15/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
本来の効力を発揮する、ラブリーアタックだ。
ぽよん、という音を立ててハートに包み込まれた子ども達は、今まで生きてきた中で最高の幸せ気分を味わっていた。
この世界を救ってほしい、と突如として異世界に飛ばされた子ども達。
心細くて、これから先どうなってしまうのかという不安に包まれながら始まった旅路だったが、たまにはこういう思いをしても罰は当たらないだろう。
今回の立役者とも呼ぶべきヌメモン達は、いつの間にか姿を消していた。
突然現れて助けてくれたかと思ったら、お礼も聞かずに去っていったしまった。
汚物系デジモン、嫌われ者と罵ったこと、少しは反省しているのだ。
今度会ったら人としてお礼はちゃんとしなくちゃね、とミミは赤いハートに包まれながら思った。
……そういえば。
「あのヌメモン、パタモンとプロットモンのことは知ってたのに、どうしてブイモンのことは青いのなんて言ったのかしら……?」
独り言ちたミミの疑問に、答えてくれる者はいなかった。
『……頼まれた通り、あいつらのこと助けてやったぜ』
おもちゃの町のお城が見える。
セピア色の草原からそのお城をぼんやりと眺めながら、ヌメモンは言った。
かさり、とヌメモンの背後に、“誰か”が立っていた。
「うん。みてたよ。ありがとうね、ヌメモン」
『けっ。見てたんなら、自分で助けてやりゃよかったのに。俺様はデジモン界の嫌われ者だぞ?何だってよりによって俺様に声かけたんだ?』
「うーん、すべてはよていちょうわ、だからかな?“あのこたち”がここにくることは、ずっとまえからきまってたから」
『まぁたそうやって誤魔化すのか。まあいい。ちゃんと頼まれたことはやってやったんだ。さっさと例のもの、俺様によこしな』
「ふふふ、わかってる。はい、これ」
幼い子どものように舌足らずな“誰か”は、籠にどっさりと入った腐りかけている食べ物をヌメモンに差し出した。
ヌメモンは大喜びで、ハートまで飛ばしている。
『しっかし何だって、陰から子ども達を見守るなんて、お前さんも物好きだねぇ?何か思い入れでもあるのかい?』
籠に入った腐りかけの魚を1つ手に取って、ぽいっと宙に投げて口に入れながら、ヌメモンは“誰か”に問いかけた。
さわり、と風が吹く。
「……あいたいひとが、いるの」
『会いたい人?』
うん、と“誰か”が頷いた。
「でもいまはまだあえないの。まだ“そのとき”じゃないから」
だから、そのときがくるまでまっているの。
『……ふーん』
その声色が何とも言えない悲哀を漂わせており、ヌメモンは2つ目の魚を口にしながら、相槌を打ってやることしかでき
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ