舌戦、舌戦、また舌戦・2
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乗り込む提督。重量制限のブザーが鳴らないかと一瞬ヒヤリとしたが、なんとか鳴らずにホッとする。エレベーターの扉が閉まり、上昇を開始する。密閉された室内では、滑り込んできた巨大な闖入者の話題で持ちきりだ。
『誰だアレ?』
『随分でかいな』
『顔怖くね?』
等といった会話が、提督に聞こえるかギリギリのボリュームで交わされていく。目立っている自覚はあるが、提督は気にした様子もない。そうしてエレベーターが各階に止まる毎にエレベーター内の人数は1人減り2人減り、やがて最上階手前のフロアでエレベーター内の人間は提督一人となっていた。
「さ〜て、いよいよボス戦って感じだなぁオイ」
提督は一人きりのエレベーター内でそう呟くと、首を回したり足首を回したりと軽い準備運動を行う。鬼が出るか蛇が出るか、最悪到着した途端に特殊部隊の急襲によって殺される、なんて未来も限り無く可能性は低いが有り得るのだ。そうこうしている内にエレベーターが最上階に到着する。扉が開くとそこは、床に赤いカーペットが一面に敷かれた、広い廊下だった。幾つかドアが在り、その最奥に更に重厚な扉が在る。
「流石に内務省、いいカーペット使ってやがる」
エレベーターから一歩踏み出す。が、その提督の足音はカーペットに吸収されて音がしない。薄いながらもクッション性に優れた高級な物であるという証だ。そんな廊下を進みながら、提督は観察を続ける。廊下に幾つか点在する扉の向こうにも人の気配を感じるが、極力音を立てないように息を殺しているようだ。
『俺にビビっての事か、万が一の時に奇襲をかます為か……さてさて、どっちかねぇ』
そんな物騒な事を考えつつ、提督は最奥にある扉の前に辿り着く。3度、ノックをすると扉の音が重い。木製のドアに見えるが間に金属が挟んであるらしい。
『入りたまえ』
部屋の主であろう男の声から返答があり、提督はドアを開ける。そこは貴族の書斎兼執務室の様な出で立ちだった。華美な装飾はないが、調度品の質からかなりの高級品である事が窺える。そんな部屋の中央からやや窓寄りの位置に、これまた豪奢な執務机が置かれている。そこにセットの革張りの椅子があり、恰幅のいい壮年の男が腰掛けていた。
「お初にお目にかかります、榎田大臣」
「此方こそ初めまして、だな。金城大将」
榎田 正成(えのきだ まさしげ)。彼こそは現内務大臣であり、総理大臣すら顎で使えるとまで噂される日本の政界のフィクサーと目されている人物である。
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