四十一 そして空は今日も青い
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のだ。
憤激して思わずベッドから立ち上がるネジ。その勢いに、白いシーツがしゅるりと床に滑り落ちた。
「そんな事を言うためにわざわざ…っ」
「選択肢が無かったのだ…。すまない」
深く頭を下げる。ヒアシの頭をネジは強く見据えた。堪らず更に言い募ろうとした彼の言葉を、ヒアシは項垂れながら遮った。
「一か八かの賭けだった…。脳細胞を停止させ、仮死状態にさせる。……なんとか生命維持に必要な機能は回復したものの、目覚める事はなかった。だから秘かに木ノ葉病院奥の病室に収容し、起きるのをずっと待っていた…」
「……何を、言って…」
「そしてようやく…。ようやく、目覚めたのだ…。十年もの永き眠りから…」
くぐもった声。ようやく顔を上げたヒアシの双眸からは幾筋もの涙が零れ落ちていた。戸惑うネジの耳に、再び扉の開く音がする。その音でヒアシの背後に視線を向けたネジは、目を大きく見開いた。
ヒアシの背後から現れたその人物は……――――。
「……ち、父上………?」
医療班員に支えられながらも佇む、日向ヒザシであった。
空を飛ぶ鳥が一際大きく囀る。その鳴声は静まり返った医務室にも響き渡った。
立ち竦み、驚愕のあまり声が出ない。押し黙っているネジに、ヒザシは微笑んでみせた。
「ネジ…。お前には辛い思いをさせたな」
謝罪する父の顔をネジはまじまじと見つめた。頬痩けているが確かに彼はネジの実の父親であった。
口をぱくぱくと開閉させる。言いたい事がたくさんあった。
けれどまず口を衝いて出てきたのは、非難を孕んだ疑問。
「……っ、生きていたのならなぜ…」
なぜ自分に教えてくれなかったのか。どうして木ノ葉病院にいると知らせてくれなかったのか。
ネジの言いたい事を察し、ヒザシではなくヒアシが答えた。
「確証が無かった。本当に目が覚めるかわからなかった…。一生植物人間として過ごす可能性もあった。だからこの事は一族の中でも本当に一部しか知らない。ヒナタでさえもだ」
だからヒアシは自身の娘を早々に木ノ葉病院から退院させたのである。完治していないにも拘らず、ヒナタがヒザシと接触する事を危惧して。
そして先ほどようやく木ノ葉病院から連絡が来たのだ。待ち望んでいた弟の目覚めにヒアシは急ぎ病院へ向かった。そしてネジと対面させる為に医療班員の協力を経て、此処医務室へ連れて来たのである。
「………っ、」
唇を噛み締める。肩を震わせる息子の姿に、ヒザシは目を細めた。支えてくれていた医療班員に礼を述べ、自分の足で歩く。ずっと寝たきりで衰えてしまった身体を懸命に動かし、彼はネジの眼前に立った。
「お前は私が死んだと聞いて、宗家を、ヒナタ様を恨ん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ