ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
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浮上する意識の向こう側で、誰かの話し声がする。
真っ暗に閉ざされていた視界は、いつしかチカチカとした光がまとわりつき、ヒカリは薄らと目を開けた。
程よいクッションが利いたベッドが気持ちよくて、身体はまだ起きたくないと訴えているが、引っ張り出された意識が再び沈むことはなく、寝転がったまま腕と足を引っ張るように伸ばした。
ゆっくりと上半身を起こす。とろとろとした目が何処を見ているわけでもなく、脳が覚醒するまで視線を落としていた。
「おはよう、ヒカリちゃん」
プロットモンはまだ寝ている。
横から声をかけられたので、そちらを振り向くと、すでに支度を終えて着替えている空がいた。
おはようございます、と寝起きの籠った声で返せば、空はクスクスと笑った。
「……もしかして、寝坊しちゃいました?」
「そんなことないわ。太陽が昇り始めた頃だもの。男子達なんかまだ寝てるわよ」
「でも支度とかしないといけないから、ヒカリちゃんも早く着替えた方がいいわよー。女の子は準備に時間がかかるんだから」
ミミもすでに起きていたようで、着替えてドレッサーの前に座っていた。
昨日ゲンナイと名乗る、人間でもデジモンでもない不思議な男性がくれたテントで、ヒカリ達は一夜を過ごした。
これから先ずっと星空の下で野宿生活を覚悟していた子ども達は、思わぬ贈り物に両手を挙げて喜んだ。
人間が生きていく上で必要な衣食住の衣と住を提供してもらったのだ、これからの旅も少しはマシになるはずである。
惜しむらくは、食の提供がなかったことだろうか。
まあ、これに関してはデジモン達に頼れば、食いっぱぐれることはないだろうけど。
テントには簡単だが調理器具もあるし、治は家の事情で台所を任されているから、材料さえあれば何とかなる、と豪語してくれたので、そちらも一旦隅へ置いておくことにして。
ようやっと覚醒した脳みそに、ヒカリはもう1度伸びをしてベッドから降りた。
プロットモンはまだ寝こけている。
パジャマを脱ぎ、ゲンナイさんが用意してくれた、ヒカリがこの世界に来た際に着ていたものと全く同じ、真新しい服に袖を通す。
はい、って空から渡されたタオルを持って、男の子と女の子それぞれに宛がわれたテントの他にある、シャワー用のテントに向かった。
シャワー用のテントにはシャワーだけでなく、洗面台とトイレもついている。
不思議だ、と治と光子郎は首を捻っていた。
何処か水源があるわけでもなく、水道から水を引いているわけでもないのに、どうして水が出てくるのか。
昨日光子郎が自力で発見した理論に基づけば、恐らくシャワーという情報やデータが形として実体化しているのだろう。
シャワーは水を流すもの。だから水源がいらないのだ、きっと、たぶん。
珍しく自信な
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