ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
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ようにするのである。
お話をしている最中、何気ない会話の中でも、少しでもお友達が嫌な顔を見せると、賢はそれを察して話題をさりげなく変えてしまう。
人はそれぞれ色々と複雑な事情を抱えているものだから、賢だってどうしてお父さんがいないのってお友達に聞かれるのは嫌だろう?ってお兄ちゃんにも言われているから、もしもお友達の様子がおかしいと気づいても、賢は深く踏み込んでいかないようにしている。
「…………そ、っか」
だから、賢はすさまじい違和感を覚えながらも、それ以上大輔に踏み込むことができなかった。
薄暗い地下水道は、暗闇に塗りつぶされており、数十メートル先が見えない。
しんみりとした空気に包まれていた子ども達の耳に、水が弾けるような音が聞こえてきた。
その音と同時に、お腹を押すと可愛い音が鳴る赤ちゃんのおもちゃのような音が、地下水道で反響している。
最初に気づいたのは、テントモンであった。
音を聞いた瞬間にギクリとその身体を震わせて、ぎ、ぎ、ぎ、と錆びたロボットみたいにぎこちなく、音がする方向に顔を向ける。
他のデジモン達も、似たような反応であった。
まだ姿は見えない。
『ヌメモンだ!』
「ヌメモン?」
ガブモンが、音の正体を言い当てた。
治が、ガブモンの言い放った言葉を復唱すると、ゴマモンがとても嫌な表情を浮かべて、子ども達に説明してくれる。
ヌメモンとは、暗くてジメジメしたところに好んで住みつき、知性も教養も戦う力もなく、デジモン界の嫌われ者と呼ばれているらしい。
そして特出すべきは、“汚い”ことだという。
汚いというのはどういうことなのだろうか、と子ども達は首を傾げた。
暗くてジメジメした、こういうところに住んでいるからという直接的な意味でなのか、それとも知性も教養も戦う力もないから、汚い手を使って相手を追い詰める、という意味なのだろうか。
……考える間もなく、子ども達は数秒後にその答えを知ることとなる。
ヌメモンが水の上を走っているらしい音と鳴き声が、どんどん近づいてくる。
ヌメモンというデジモンがどんな姿をしているのか気になった子ども達は、その場でじっとしていて動かない。
デジモン達はというと、何故か及び腰で、顔を真っ青にさせてじりじりと後ずさっていた。
やがて、ヌメモンがその姿を現す。
子ども達の印象は、緑色のナメクジ、であった。
ぬめぬめと粘り気のある、スライムのような身体。
ぎょろりと大きな目は身体から離れるように飛び出しており、大輔はカタツムリの歌を思い出した。
カタツムリのアレは、目ではなくて角なのか槍なのか、お姉ちゃんと談義をしたことがあったけれど、それは今は関係ない。
というよりも、そんなことを考えている場合ではない。
やっぱりヌメモ
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