ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
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いた。
思ったことを口にするだけなら罰は当たらない、そう言いたげだった。
それを皮切りに、他の子ども達もやりたいことを各々口にする。
湯船にゆっくり浸かりたいとか、メル友とメールのやり取りがしたいとか、勉強がしたいとか、いつもなら何気ない日常を、非日常に放り込まれた子ども達は懐かしく思った。
「だったら僕はゲームしたい!まだクリアしてないゲームがあるから、帰ったらお兄ちゃんと一緒にやりたいなぁ。ヒカリちゃんは?」
「私?私は……そうだなぁ、本が読みたい。夏休み中にいっぱい本を読むって目標立てたから……」
「そっかー。僕も本好きだよ。冒険ものとか。ヒカリちゃんは?」
「ファンタジーが多いかな。私も魔法使ってみたいし、妖精さんにも会ってみたい!」
「ふふふ、ヒカリちゃんらしいね。大輔くんは?帰ったら何したい?」
それは、当たり前のフリであった。
ヒカリちゃんにも聞いたのだから、大輔くんにも話を振るのは当然だった。
2人が知っている大輔なら、張り切って教えてくれるだろうと思っていた。
きっとたっくさんやりたいことがあるだろうなって、あれがしたいこれがしたいって欲張って、それで賢とヒカリが笑うのだ。
やりたいことありすぎだよって笑い合うのだ。
そう信じて、疑っていなかった。
しかし、
「………………」
大輔は、口を噤んだままだった。
目線を下に落として、きゅっと唇を結んで、何かを考えこんでいるかのようだった。
あれ?って賢とヒカリは首を傾げる。
てっきりすぐにマシンガントークをかましてくれると思っていたのに、大輔は一言も発さないのである。
「……大輔くん?」
「……俺、は」
上級生達は、自分達のやりたいことで盛り上がっていて、最年少達の様子に気が付かない。
気が付いてくれたのは、最年少のパートナー達だけだった。
「……お姉ちゃんに会いたい」
この時、賢は強烈な違和感を覚えた。
ぽつりと落とされたように放たれた大輔の言葉は、傍から聞けば特に変わりのない言葉かもしれない。
大輔にはお姉ちゃんがいるというのは、昨日教えてもらったから、もしかしたらその話からお姉ちゃんが恋しくなってきたのかもしれない。
それで、お姉ちゃんに会いたいなんて言葉がつい口に出たのかもしれない。
でも……。
お姉ちゃんに会いたい、という切実な願いが漏れた言葉とは裏腹な、この怒っているような、悲しんでいるような表情は一体何なのだろうか。
賢は聡い子で、敏い子である。
賢い子どもである。
両親が離婚し、家族がバラバラで暮らしているという、それなりに特殊な家庭事情を抱えているせいなのか、人の顔色を異様に伺う子であった。
お友達とは滅多に喧嘩をしない、しても賢が先に折れて喧嘩に発展しない
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