ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
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子ども達の心は1つであった。
しかし飲食に関するサポートは間に合わなかったか、それともそこまでの余裕が作れなかったのか、受け取ることはできなかった。
初日は運よく湖で魚を釣って果物と一緒に口にすることができたが、次もそうできるとは限らない。
魚や果物はともかく、肉は既に加工されたものを調理したことしかないから、食べるとしたらまずは生き物を仕留めるところから始めなければならない。
そのことを想像して、治は自滅しかけたのだが彼はすっかり忘れているようだ。
この世界にはデジモンしかいないのである。
例え治に解体スキルがあろうとも、デジモンの肉が食べられるのかも分からないから迂闊に手が出せない。
そもそもの大前提が子ども達の世界とこの世界で違うのだが、今はそんなこと知る由もなかった。
閑話休題。
「こんなところにコーラなんかあるわけないじゃないですか」
「分かってるわよ、そんなこと!」
光子郎が窘めると、キッと光子郎を睨みつけながら食って掛かるから、光子郎は肩を竦める。
後ろの方を歩いていた最年少は、きょとんとしながら上級生達のやり取りを眺めていた。
「……でも口にしないと、爆発しそうだったんだもん」
「……気持ちは分かるよ、ミミちゃん」
しかしすぐさまシュン、となって項垂れる。
治が苦笑しながらミミの肩にそっと手を添えた。
ミミは思ったことは全て口にしないと気が済まない性格だ。
がーっと言うだけ言ってすっきりして、知らん顔をするのである。
相手がどう思っているとか関係ない。
ただ心の中で思い浮かんだ言葉を全部口にして、溜め込まないようにしているだけなのである。
心の中で溜め込みがちにして、限界まで心の風船を膨らませてしまうと、ちょっとした刺激で簡単に破裂してしまうのだ。
そうならないように定期的にガス抜きをするのだが、ミミの心の風船はほんの一息膨らませただけでプシュッと空気が抜けてしまうらしい。
膨らませすぎは危ないが、膨らむ前に空気が抜けていくのもどうなのか、と光子郎は頭を抱えた。
だがミミは特段、我儘を言っているのではない。
思ったことを口にしているだけで、具体的にああしてこうしてあれいらないこれいらないと言っているわけではないのだ。
現にミミはコーラを飲みたい、とは言ったけれどコーラを持ってこいとは一言も言っていない。
誰かを顎で使って、ないものを持ってこいなんて無茶を言うほど、ミミも鬼ではない。
「……だったら僕は焼き肉が食べたいなぁ」
思わぬところから声が上がり、みなの視線がそちらに向けられる。
そう言ったのは、治だった。
あまりそういったことを口にしない治が、珍しく自分の気持ちを吐き出したのである。
太一も空も、目を真ん丸にして治を見やれば、苦笑して
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