ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
[12/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
じたと同時に、大輔は鼻と口を押えていた手を放して、抑えていた息を全て吐き出した。
新鮮な空気を、深呼吸して肺に送り込む。
が……。
『……外もウンチ塗れだね』
『……タイチ達も見当たらないし、外まで追いかけられたのかしら』
『……この天気だもんねぇ』
洞窟の外は、岩肌の山だった。
少し小高い位置にあるようで、2メートルほど下に枯れかけた草原が見える。
そして洞窟の外にも、たくさんのピンク色が落ちていた。
それを見て、それから空を見上げたブイモン達のつぶやきに、賢がはてなと首を傾げる。
「どういうこと?」
『見て、ケン。空、太陽が隠れちゃってるでしょ?』
『ヌメモン達は太陽の光が苦手なんだけどね、たぶんタイチ達が外に出た時も曇ってたんでしょうねぇ』
『太陽の光で撃退できなくて、タイチ達逃げるしかなかったのかなぁ。ウンチがあっちに続いてるし、しょうがないから後追おう?』
ブイモンが指さした先に、点々とピンク色の排泄物が落ちている。
ブイモン達によれば、ヌメモンは暗くてジメジメしたところを好むが故に、明るくて乾燥したところが苦手らしい。
だが見上げた空には厚くてほの暗い雲が、太陽を隠してしまっていた。
もしも雲がなかったら、太陽の光がギラギラと照り付けて、ヌメモン達を退けてくれて、はぐれてしまった最年少達を待っていてくれるなり、探しに来てくれていたであろうに。
大量のヌメモン達がピンク色の排泄物を次から次へと投げつけるせいで、デジモン達は技を放つ隙すら与えられなかったのだろう。
そうでなければ次の世代に進化可能なパートナー達がいるのに、ヌメモンを追い払うことができなかったはずがない。
1番弱い技を放つパタモンよりも弱いという話だから、排泄物さえなければ楽勝のはずなのだ。
汚い、というのは当初の予想通り、二重の意味が含まれていたらしい。
仕方ない、と大輔達は点々とぶちまけられているピンクの排泄物を目印に、太一達を探すために歩き出した。
よりによって排泄物が目印だなんて、せめてヘンゼルとグレーテルのように石ころやパン屑だったらよかったのに、とヒカリは頬を膨らませながらメルヘンチックなことを考える。
2メートル弱の小高い崖になっていた足場は、やがて緩やかな坂道になり、枯れ草の草原と合流する。
排泄物はまだ続いており、セピア色の背景には異物でしかないのだが、目印としては大変助かった。
しかし。
「……嘘だろ」
『そんなぁ』
先頭を歩いていた大輔とブイモンが突然立ち止まり、唖然と呟いた。
どうしたの、と大輔達の後に続いていた賢とパタモン、ヒカリとプロットモンが大輔につられて足を止め、声をかける。
振り返った大輔とブイモンの表情は、絶望にも似た色に染まっていた。
何があったのだ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ