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ナイン・レコード
ちいさなしまのおはなし
地下水道にて
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さげな治だったが、太一のへーやっぱお前すごいなーって言葉で苦笑しながらも立ち直ったので、良しとしよう。

本当なら洗顔用ソープもあればよかったのに、というのはミミの愚痴である。
小学4年生ながらに、お洒落に余念がないミミは、お肌のお手入れだって気を使っていた。
可愛いもの、綺麗なものが大好きな母の影響だろう。
母は昔からフリルやリボンがいっぱいついたお洋服を着るのが好きだったし、娘のミミに着せるのも好きだった。
元から可愛いミミだが、母はいつも「可愛いも綺麗も努力して手に入れるものよ」と口酸っぱくしてミミに言い聞かせていた。
今が可愛いからってそこに胡坐をかいていると、いつか努力で可愛いを手に入れた人に追い抜かされる。
手入れを怠れば、あっという間に劣化する。
だからちゃんとお手入れはしなきゃだめよ、ってお母さんはミミの髪を梳かしてやりながら、口癖のように言っていた。

「あー!ヒカリちゃん、待って待って!」
「ほえ?」

顔を洗ってテントに戻ってきたヒカリは、ミミが使っていたドレッサーの前に立つと、空よりも短い焦げ茶色の髪の毛を手櫛で軽く整える。
後ろの方は見えないけれど、まあいいかぁって妥協してドレッサーから離れようとしたら、ミミが悲鳴にも似た叫び声をあげながらヒカリの腕を掴み、ドレッサーの前に座らせた。

「もう!ダメじゃない、ヒカリちゃん!手櫛だけで済ませちゃうなんて!女の子でしょ!ほら、お姉さんがやったげるから、座ってて!」
「ええっ、い、いいですよ、私の髪、短いし……」
「短いからって整えなくていい言い訳にはならないの!」

いいから座る!と有無を言わさないミミの剣幕に、ヒカリは従うしかなかった。
短く切られた髪は、少しだけ濡れている。
恐らく顔を洗った際に水を少し撫でつけたのだろう。
何てこと、とヒカリの頭に触れたミミの手がわなわなと震えた。
と言うか、

「あー!ヒカリちゃん、昨日ちゃんと髪の毛乾かさないで寝たでしょう!」
「う……は、はい……」
「髪の毛ごわごわになっちゃってるじゃない!ダメよ、ちゃんと乾かさないと!」

残念ながらゲンナイさんが用意してくれたテントに、整髪剤のようなものはない。
必要最低限の装備しかなかった。
シャンプーやリンス、コンディショナー、ボディーソープやハンドソープ、バスタオル、ハンドタオルは子ども達とデジモンの分だけあったのに、シャワー後のヘアケアやスキンケアの類はなかった。
もしゲンナイに逢う機会があったら、それらも全部用意してもらわなきゃ、ってミミはぷりぷりしている。
しょうがない、ブラシとドライヤーで今は我慢しよう。
口をとがらせながらミミはヒカリの髪をブローする。
ゆっくり、ゆっくり、時間をかけて丁寧に。
ロールブラシを上手く動
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