ちいさなしまのおはなし
選ばれし子ども達
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を設置し、男子と女子で別れて眠りにつく。
ベッドはフレームがなく、クッションと毛布だけの簡易なものだったが、それでも地面何かよりは随分マシである。
これから先ずっとベッド無しの地べたで野宿生活を覚悟していただけに、この支援はとても有難い。
2日ぶりのシャワーを順番に浴びて、自分達が普段使っているのと似たようなパジャマを着こんで、それぞれのベッドに潜り込んだ。
デジモン達は初めてのベッドに警戒した様子ではあったが、子ども達が躊躇なくベッドに寝転がるのを見て、遠慮なく布団に入った。
ふかふかで気持ちいい、とデジモン達はすっかりベッドを気に入ったようで、ベッドに入ってから数秒程で寝入ってしまった。
子ども達も、2日ぶりのベッドで嬉しくて興奮しきっていたが、その内ベッドの心地よさに誘われて、すーという寝息がテント内に静かに響いた。
ぐったりとクッションに身を任せ、明日に備えてその身体を休めている子ども達を尻目に、治はテントの外でぼんやりと座り込んでいた。
その表情は、険しい。
何か考え込んでいるようで、組んだ両手の甲に口元を隠すように乗せて、じっと一点を見つめていた。
そんな治に気づかない親友の太一ではない。
ばさり、とテントの入り口を覆っていた布が捲り上げられ、長考にしていた治が気付いて振り返ると、口元に笑みを浮かべて、テントの中から顔を覗かせている太一がいた。
意識が思考の海に沈んでいたために、いきなり呼びかけられた治はビクリと身体を大袈裟に震わせて硬直していたが、声をかけてきたのが太一だと知ってジト目で睨み付けた。
「まだ起きてたのか?」
「それはこっちの台詞だっての……何か気になることでもあったんだろ?」
よっこいせ、と親父臭い掛け声と共に、太一は治の隣に座り込んだ。
うん、まあ、と治は何処か歯切れ悪く返事をする。
「何だよ、言ってみろよ」
「果たしてお前に言って半分も理解できるのかな?」
「言ったな、コノヤロー!」
悪戯っ子の笑みを浮かべる太一に、同じような笑みを浮かべて返す治。
ぼさぼさ気味の髪に両手を伸ばしてぐしゃぐしゃにしてやれば、やめろ!と笑いながら抗議された。
ひとしきり笑った後、2人同時に深い溜息を吐く。
一瞬の間。
「……で?マジで何考えてたんだよ」
見上げても、工場の煙突から出て行く灰色の煙に遮られているせいで、夜空に散らばる星は見えない。
それでも太一は重心を後ろにやって、両手で上半身を支えながら空を見上げた。
治は、立てた右の膝に右の腕を乗せて、気だるげに構える。
「……ゲンナイさんが言っていたこと、お前覚えているか?」
「ゲンナイさんが?お前みたいに一字一句覚えているわけじゃねーけど……この世界と俺達の世界は無関係じゃなくて、こっちの問題を解決しねー
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