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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第43話:情けは捨てきれず
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てきた。
「アルド。どうだ、2人の様子は?」
「しー……」
やって来たのはウィズだ。何時もの恰好で部屋に入ってくるとアルドにクリスと透の事を訊ねるが、アルドは眠ったクリスが再び起きてしまわないようにと静かにするよう口元に人差し指を当てる。彼女の仕草にウィズが言葉を詰まらせると、アルドはなるべく抑えた声で話した。
「先程、クリスさんが目覚めました。ただまだ体力が完全に回復した訳ではないので、軽く食事を摂らせ再び眠らせました。透君の方はまだ目覚めません」
「そうか。まぁメデューサに毒の魔法を浴びせられたのだ。回復にはまだ時間が掛かるか」
「暫くは絶対安静です。それと、透君に関してですが……」
「何かあるのか?」
どこか歯切れの悪いアルドに、ウィズが訝し気に訊ねると彼女は透に目をやった。フードに隠れて分からないが、その雰囲気は何処か痛ましいものを見ているように感じられる。
「彼は喉に古く深い傷を持っています。恐らく声は失われているでしょう」
「問題ない。口が利けないなら筆談で教えてもらうまでの事だ。あの様子で流石に文字も書けないという事はないだろう」
「いえ、そうではなくて…………」
アルドが本当に言いたい事はそこではなかった。彼女は可能であれば透の治療をしたいと考えていたのだ。
しかし――――
「治療したいと言うのなら不要だ。そこまでしてやる理由がない」
「ですが……それでは…………」
若くして何らかの不幸により声を失ってしまった少年をアルドは痛ましく思っていた。出来る事なら、力になりたい。
だがウィズはそれを許さない。許す訳にはいかなかった。
「他人に対する情は最低限にしろ。多少施しを与えたいと言う程度ならまだしも、そこまで面倒を見てやると情に抑えが利かなくなるぞ」
「…………はい」
「忘れるな、私は『ウィズ』でお前は『アルド』なんだ。この名はジェネシスを倒す戦士としての名前だ。他人への情など捨てろ。でなければ、耐えられなくなるぞ」
「分かって…………います」
絞り出すようにして言葉を口から出すと、彼女は黙ってその場を離れ別の部屋へと入っていく。彼女の作業様に設えた部屋だ。
ウィズはそれを見送ると、彼女が扉を閉めたのを見計らい指輪を交換し魔法を使った。
〈サイレント、ナーウ〉
部屋全体が魔法陣で包まれると、途端に室内の音が全て消えた。クリスと透の息遣いは勿論、時折外から響いてきた車の走行音なども。
――…………新しい器具を用意する必要があるな――
アルドが入っていった部屋を見ながら、ウィズはそんな事を考えるのだった。
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