暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第43話:情けは捨てきれず
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が、今はこれで我慢してくださいね?」

 野菜が細かく刻まれ、軽くドロドロになるまで煮込まれたと思しきスープ。粥か何かの様なそれから漂う匂いは、忽ちクリスの空腹を刺激し再び腹の虫を鳴かせる。

 体はすぐにでもそれを食べろと言うが、しかしまだ完全に警戒を解いていないクリスはそれに手を付ける事をしない。もしかしたら今までのが全て彼女を油断させる為の演技であり、このスープに何かを仕込んでいるかもしれないのだ。

 スープと女性の顔を交互に睨むクリスに、女性は小さく溜め息を吐くと一緒に置かれたスプーンを手に取りスープを掬うと一口飲んだ。

「……これで、毒などは入っていない事を理解していただけましたか?」
「――――チッ」

 自ら率先して毒見をしてみせた女性に、クリスは何だか負けたような気になり悔し紛れに舌打ちをすると女性からスプーンを引っ手繰りスープをかき込むように口に運んだ。一度口に入れると、体の方が抑えが利かなくなったのか休む間もなくスープを掬っては口に突っ込む。まだ口の中にスープが入っているのに次を口に入れようとして、口元から零れたスープがクリスの口周りやテーブル、着替えさせられた寝間着を汚していく。

 そうして数分ほどで完食すると、今度は眠気が襲ってきた。まだ疲れが残っていたのと、温かいスープを飲んだことで体の緊張が解れたのだろう。

「あふ……」
「あ、少々お待ちを」

 一つ大きな欠伸をして舟を漕ぐクリスを引き留め、女性は替えの寝間着に着替えさせた。流石にあのまま寝かせる訳にはいかなかったのだ。
 眠気の所為で思考が鈍ったクリスはされるがままに寝間着の上を着替えると、横になり布団を掛けられた。

 クリスはそのまま眠りに落ちようとするが、一つだけどうしても気になる事があったので睡魔を堪えて女性に問い掛けた。

「あ、なぁ…………そう言えば、聞き忘れるところだったけど、あんた……一体誰なんだ?」

 状況の変化に混乱していた上に透の事が心配だったのもあって、女性の名を聞くのをすっかり忘れていた。彼女にとって先程まで女性に対する関心はその程度だったと言うのもあるが、逆に言えば今は彼女の名前が気になる程度には興味を持ち始めているという事でもある。

 今にも眠ってしまいそうなクリスに教えて、目覚めた時覚えているかは分からないが、それでも彼女はクリスからの問い掛けに答えた。

「申し遅れました。私の事は、アルド……とお呼びください」

 アルド…………彼女がそう名乗ると、クリスは口の動きだけでその名を反芻しながらゆっくりと眠りについていく。

 あっという間に寝息を立て始めたクリスを見て、アルドは音を立てないようにテーブルを片付けると食器を乗せた盆を下げる。

 そこへ新たな人物がやっ
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