暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第43話:情けは捨てきれず
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しい口調でクリスの事を気遣う女性だったが、クリスはそんな彼女の気遣いを煩わしいとでも言うかのような態度で返した。

「う、うるせぇ、余計なお世話だ。それより透……アタシと一緒に居た男の子は?」
「彼でしたらそちらに」

 反発するクリスに、しかし女性は気を悪くした様子も無くクリスの視線を彼女の右隣に誘導する。促されるままに自分の右隣に顔を向けるクリス。その際部屋の内装を見る事になったが、部屋の造りなどを見た所ここはどうやら何処かのマンションかアパートの一室らしい。

 そんな感想も、隣で目を閉じ身動ぎすらしない透の姿に掻き消える。

「透ッ!?」

 思わず起き上がり透に近寄ろうとするクリスだったが、それは女性により止められる。

「ですから、動いてはいけません。彼ほどではありませんが、貴女にも安静が必要なのですよ?」
「余計なお世話だっつってんだろ!? それより、透は?」
「彼でしたら大丈夫です。解毒は済ませ、手当も終えています。命に別状はありませんが、貴女以上に彼は体力の消耗が激しいので当分の間は絶対安静です」

 先程よりも強めの口調で、しかしそこには確かな気遣いを感じさせる声でクリスを諭し寝かせる女性。徹底して敵意を感じさせない彼女の雰囲気に、流石のクリスも少しだけ警戒心を引っ込め大人しくすることにした。

「本当か? 本当に透は大丈夫なんだな?」
「ご安心ください。そこは誓って保障します。貴女達に危害を加えない事も含めて、です」

 そう言って頭を下げる女性に、クリスも今は大人しくすることを選んだ。顔も晒さない彼女の言う事を全面的に信じる事は出来ないが、少なくとも今すぐどうこうするつもりがない事だけは信じる事にしたようだ。
 どの道、満足に動けない現状ではヘタなことは出来ない。ここは彼女の言う通り傷を癒し体力を回復させることに専念した方が、ここから逃げ出す時に都合がいいだろう。そう考えたクリスは、女性に促されるままに布団の中で肩の力を抜いた。

 その瞬間、クリスの腹が盛大に音を立てた。思えばここ最近ロクなものを食べていなかった。逃げる事に必死になるあまり、思うように食料の調達が出来なかったのだ。
 不覚にも腹の虫が鳴いたのを女性に聞かれ、クリスは恥ずかしさと情けなさで顔を赤くしたが女性の方はこうなる事を予想していたのか即座に立ち上がると台所へ向かった。

 それから物の数分ほどで、女性はスープの入った皿を乗せた盆を持ってきた。女性は盆をクリスの枕元に置くと、彼女の背中に手を回して起き上がるのを手助けし、折り畳み式の小さいテーブルを組み立てクリスの膝を跨ぐように置いたそれの上に盆を置いた。

「お腹が空いているでしょうが、体力の消耗した体に固形物は宜しくありません。物足りないかもしれません
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