暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
中村希の憂鬱
8話 スカッと三振して良いからね!
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められるのが4番という打順である。

 芳乃の作戦としては、相手ピッチャーは立ち上がりが悪いので、そこを突いてランナーを溜め、希のバットで帰すというものだった。

 しかし、肝心の希の表情は優れない。

「大丈夫。チームで一番打ってるんだから!」

 芳乃はそう言うが、希は不安そうに視線を揺らす。

「まったくー、希ちゃんは仕方がないなー」

 希と芳乃の方を向いた。

「芳乃ちゃん。つきの試合、私を5番に置いてよ」

 正美の言葉に二人は驚く。特に、芳乃は嬉しそうにそのツインテールを揺らす。

「良いの!?」

 興奮して正美に詰め寄った。

「うん。希ちゃんが打てなくても、代わりに私がシュバッとランナーを帰すよ、だから希ちゃん」

 正美は満面のにへら顔を希に向ける。

「スカッと三振して良いからね!」

 最後の一言を聞いた希はムッとした顔になった。

「そげん事せんよっ」

 そんな希の顔を正美は両手で包む。

「そうそう。その顔その意気ー」

 正美は優しげな表情で更に続ける。

「ねえ、希ちゃん。どんな天才プロ打者でも10打席中4本もヒット打てないじゃない?フォアボールとか入れても半分にも満たない。野球って数字だけ見れば圧倒的にピッチャー有利なんだよ?だから、バントや進塁打、塁に出たならピッチャーを揺さぶったりして、みんなで1点を取りにいくんだ。だから希ちゃんも??????」

 もう一度、希の頬を掴んた正美はそのまま広げるように引っ張った。

ひはひ(痛い)はさふぃしゃふ(正美ちゃん)ひはひよぉ(痛いよぉ)

 希は涙目で訴える。

「うちが頑張らないとー、なんて生意気なこと言わないの」

 そう言うと、正美は手を放した。

「じゃ〜、早速ダメダメなスイングを直さないと〜」

 正美の話が終わると、芳乃は希の手を引く。

「そげんはっきり言わなくても……」

 控えめに抗議する希だったが。

「いやいやー、あの力任せのスイングを希ちゃんがしてたと思うと目を覆いたくなったよ。例えるなら、もがき苦しむゴリラかなー?」

 正美は希をバッサリ切り捨てたのだった。

「言い方ぁ!」

 そんな正美に、希も今度は激しく抗議をする。

「あと、希ちゃんは疲れてるんだから、練習は明日ね」

 さっきまで一緒に練習をしていた正美は、芳乃の提案に反対した。

「え〜。ならせめてフォームチェックだけでも……」
「……まあ、それくらいなら……」

 芳乃の代替案に、正美もそれならばと同意する。

 芳乃と正美はもうちょっとだけグラウンドに残り、希の練習に付き合うのだった。
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