暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
中村希の憂鬱
8話 スカッと三振して良いからね!
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から想像もしていなかった正美の怒る姿に、希はたじろぐ。

 希の謝罪の言葉を聞いた正美はその手を話した。

「それじゃあ希ちゃん?言い訳を聞こうじゃないか」

 希があんな練習の仕方をするなんて、何か理由があるはずだ。そう、正美は考えている。

 3人でベンチに引き上げ腰を掛けると、希は語り出す。中学最後の試合で4回のチャンスをふいにした事。ここでもまだチャンスで打てておらず、打点も上げていない事。自分がもっと頑張らないと、自分だけ塁に出てもチャンスで打てなければ意味がない。このチームで全国に行きたいから、と。

 そんな希に芳乃は伝える。

「勝ちたいって気持ちは一緒だけど、誰も負けたのが希のせいだなんて思っていないんじゃない?打てなかったった人、守れなかった人。みんなが反省して、もっと頑張ろうって思ってる。希ちゃん一人が責任を感じる事じゃないよ」

 前のチームもきっとそうと、芳乃は続けた。全国で会おうと見送ってくれたのだから。

「私ね、希ちゃんがホームインしてハイタッチするのが一番の楽しみなんだ。だから、全部ひとりでやろうとしないで欲しいな」

 芳乃は立ち上がり、希の正面に回る。

「それに、希ちゃんから言い出したことだよ。一緒に全国行こ、みんなで」

 希の手を芳乃が取ると、希は何かに気付いた様子を見せた。それは芳乃の手にできた沢山の新しいマメ。毎日のノックでできたものである。

「うん!」

 嬉しそうに返事をした希は、入学してから一番の笑顔を見せた。

「いやー、青春だねー。二人ともいい雰囲気だしちゃってー。周りに百合の花が見えたよ?2人とも私の事忘れてない?」

 正美はジト目で希と芳乃を見ている。

「ちゃんと覚えてるよ」

 正美の言葉に芳乃は苦笑する。

「なら良いけどー……。さて、希ちゃん。私からも一つ」

 正美は人差し指を立てた。

「確かにチャンスでビシッと打つのも大事だけど、自分が出塁してホームに返ってくるのって意味の無い事かな?」

 正美の言葉を聞いて、希はハッとする。正美は更に言葉を続ける。

「最近入部した私が言うのもあれだけど、希ちゃんだってちゃんと点数に貢献してるんじゃないかな?」

「そっか……正美ちゃん、ありがとう」

――これで少しでも肩の荷が降りると良いんだけどな。

「そういえば、今日遅くまで何しとったと?」

 希の質問に、監督と会議だと芳乃は答えた。彼女はカバンからノートを1冊取り出す。そこに書かれていたのは、次の練習試合の相手のデータだった。

「それで一つ考えたんだけど、次の試合、4番お願いできるかな?」

 予想外の提案に、希は唖然とする。彼女が打っていた一番よりも、格段にに打点を求
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