暁 〜小説投稿サイト〜
天才少女と元プロのおじさん
中村希の憂鬱
7話 渋団扇使う?
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 理沙によって、山なりにふわりと投げられたボールを正美がバントした。打球は数回弾んでホームベース上で止まる。

 次に来たボールも、そのまた次も、正美は正確にホームベースにボールを落とした。

「さっきから何やってるんだ?」

 近くで素振りをしていた怜は正美に問う。

「バント練習の前の準備運動みたいなものですよー。全身を柔らかく使ってボールの勢いを完全に殺すんです」

 怜にこの練習の意味を伝えると、暫くこの練習を続けた。

「次からは普通に投げてください」
「分かったわ」

 正美はバントの構えをとると、理沙の投じたボールをバットで受ける。ファースト方向、サード方向、正美はどちらにも絶妙な加減でボールは転がした。時折、プッシュバントを交えたりもしている。

「正美はバントなんて必要ないんじゃないの?」

 マシン打撃を終えた稜が、バント練習をする正美を見付け、近付いてきた。

 稜の言葉に正美は苦笑しながら答える。

「そんなことないよー。私だって毎回打てる訳じゃないし、相手や状況によってはバントの方が良いこともあるよ」

 ピッチングマシンの操作をしていた芳乃もこちらにやってきた。

「正美ちゃんにも苦手なタイプってあるの?」
「そりゃそうさー。私だって完璧超人じゃないんだから」
「よかったら聞かせてもらっても良い?」
「良いよー。まずはねー??????」

 正美は芳乃に自身のプレイスタイルに始まり、弱点について話す。

「なるほど〜。分かった。参考にするよ」

 芳乃はピッチングマシンの元へ戻っていった。




「4分割にしてから迫力が増した気がするわね……まるで死神の鎌ね」

 詠深の投球練習でバッターボックスに立っていた息吹が、途中まで顔面に向かってくるナックルスライダーの軌道に、恐怖のあまりそう呟く。

「魔球デスサイズですか!かっこよすぎです!」

 その呟きが近くで素振りをしていた白菊の琴線に響いたようで、彼女は興奮した様子で息吹に詰め寄った。

「勝てなさ過ぎて遂に味方にまで死神と呼ばれるようになったか……」

 “死神”というワードに詠深はショックを受けた様子で、投球練習が終わったにも関わらずマウンドで立ち尽くしている。

「球の軌道の事だよ。鎌で首を狩るような」
「なるほど」

 珠姫のフォローに詠深は納得した様子を見せる。

「それに勝てないこと言うなら死神じゃなくて貧乏神だよね」
「……死神でいいです」

 無意識に追い打ちを掛ける珠姫に、詠深は肩を落としてそう返した。

「あはっ。ヨミちゃん攻撃中ベンチで渋団扇使う?ミネラルの補給に味噌も用意しよっか」

 詠深の球の軌道を観察していた正美は、ニ
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