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夏の甘い時
第五章
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「冬も観られますけれどね」
「スキー場でね」
「それで家族で毎年スキー場に行きますけれど」
「その時にもなんだ」
「観ます、ですが」
 それでもとだ、さらに言う瑠璃だった。
「やっぱり観られるなら」
「観るんだ」
「何時でも」
「そうするんだ」
「こうして」
「じゃあ最後まで観るね」
「そうさせてもらいます」
 こう彰に答えてだった。
 二人は出店の後は花火を楽しんだ、その時に。
 彰はふと右手を瑠璃の左手、隣にいる彼女に向けようとした。だが途中で引っ込めてそうしてであった。
 収めた、だが。
 その彼の手に瑠璃の手が来て掌と掌を重ね合わせ。
 指と指を絡めて握ってきた、驚く彼に彼女は顔を向けて微笑んで言ってきた。
「私はいいですよ」
「いいんだ」
「はい、二人の間こうしていましょう」
「それじゃあ」
 彰も微笑んで応えた、そしてだった。
 二人は夏祭りの間、彰が瑠璃の家まで彼女を送るまでの間ずっと手を握り合っていた。家の玄関の前で笑顔で別れて。
 そうして彰は自宅まで笑顔で帰ったが玄関で。
 青と緑の浴衣を着た法子に会った、法子の頭の左の部分には特撮ヒーロー、それも手袋とブーツが銀色の最初の彼のそれがあり。
 右手には水風船左手にはスーパーボールがあった、その姿で兄に言ってきた。
「お帰り」
「お前もな」
「キスもしなかったのね」
「何でわかるんだよ」
「だってキスまでいったら」
 それこそというのだ。
「もっと凄い顔になってるから」
「そうなのか?」
「それでゴム使ったら」
 法子は兄と共に家に入りつつさらに話した。
「全身汗だくだから」
「そうなのか?」
「真夏に激しい運動したら」
「あれは激しい運動なのか」
「そうよ、二人でやる」
「それでか」
「夜でもお外でも真夏にしたら」
 それこそというのだ。
「汗だくになってるわよ」
「そうなっていないからか」
「してないの一目瞭然だから」
「そこまでわかるのか」
「この近所にそうしたホテルないし」
 法子はさらに言った。
「そもそもお兄ちゃんそこまでお金ないし」
「出店でかなり使ったな」
「そう、会っても出店で使うから」
 それでというのだ。
「なくなる」
「よくわかってるな」
「聞いた話だと」
「経験からじゃないんだな」
「だから私そうした経験一切ないから」
「あくまで聞いた話か」
「読んで」
 そうしてというのだ。
「知ってるだけ」
「そうなんだな」
「そう、けれど手は握った?」
「それはな」
「まずはそこからね、頑張ってね」
「ああ、しかしな」
 ここで彰は瑠璃の今の浴衣姿を見て言った。
「お前着替えたんだな」
「ええ、夏祭りといえばね」
「浴衣だからか」

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