暁 〜小説投稿サイト〜
夏の甘い時
第二章

[8]前話 [2]次話
「何でそこで禿の話が入るんだ」
「お兄ちゃんの未来も予想してよ」
「禿げるのか、僕は」
「十年後はそうでしょ」
「おい、早過ぎるだろ」
 十年後は二十代だ、その年代で禿げるならというのだ。
「それは」
「イギリスの王子様達みたいに」
「おい、それは不謹慎だろ」
「他の国の王族の方々でも」
「ご本人達笑い飛ばしてるけれどな」
 それでもというのだ。
「内心気にしてるからな」
「だからなのね」
「それは言うな」
 名前は出すなというのだ。
「いいな、とにかくこれからな」
「デート行くのね」
「夏祭りにな」
 あくまでこう言い張る彰だった。
「そうしてくるな」
「頑張ってね、それでシャワーも浴びたのね」
「清潔にして悪いか」
「清潔なのはいいわ、ただね」
「ただ?今度は何だ」
「コンドーム持った?」
 死んだ魚の目のまま言った。
「そうした?」
「な、何言った今」
「だから、若しもの時はね」
 その時はとだ、法子はギクリとなった兄に対してさらに言った。
「使うでしょ」
「使うか、あんなの」
「けれどお財布の中に一個はあるでしょ」
「ある筈ないだろ、そんなの」
「あっ、嘘じゃないわね」
 法子は彰の必死の言葉からそのことは察した。
「そうね」
「当たり前だろ」
「じゃあポーチの中に入れてるわね、箱単位で」
「そ、そんな筈は」
「今度は図星ね、ただそこでその反応は未経験ね」
「そういうお前はどうなんだ」
 事実を指摘されて苦し紛れの反撃だった。
「ないわよ」
「ないのか」
「お兄ちゃんと一緒よ」
 つまり未経験だというのだ。
「完全にね、キスも手をつないだことも」
「ないのか」
「ええ、彼氏もいないし」
「そうなんだな」
「けれどお兄ちゃんには瑠璃さんいるなら」
「それならか」
「何があるかわからないから」
 それでというのだ。
「用心の為にもね」
「そういうのはか」
「持っておくべきでしょ」
「未経験の割に生々しいな」
「そういう本も読んでサイトも観てるから」
 それでというのだ。
「私なりにね」
「知ってるんだな」
「そうよ、じゃあ行ってきてね」
「お前は行かないんだな」
「もっと勉強するから」
 受験勉強、それをというのだ。
「だからね」
「大変だな」
「後で行くわ」
「やっぱり行くんだな」
「行かないと」
 それこそというのだ。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ