第6話「想いの竜ーテイルドラゴンーその3」
[1/14]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ヒロ兄……」
私にはもう見ていられなかった。
私たちを助けに来てくれたヒロ兄は今や敵の罠に嵌まり甚振られている。
蹴られ、踏みつけられ、罵られ……。
後ろを振り返ることはできないけどきっとそーじも同じ気持ちなんだろう。
「私たちが捕まらなければ……こんなことには……」
「愛香、お前今、諦めようとしてないか?」
「え?」
項垂れた私の耳に聞こえてきたそーじの声はまだ諦めていなかった。
「昔、ヒロ兄と組手をやった時の事、覚えてるか?」
「……うん。確か私もそーじも、何回やってもヒロ兄に勝てなくて、諦めようとしたんだっけ?」
「そうそう。……その時ヒロ兄に言われたこと、覚えているか?」
確か……あの時ヒロ兄は……。
──―『諦めるな。諦めればそこで全部終わりだ。でもな、諦めずに続けていれば絶対に良い方向に向かうんだ。だから諦めるな!!』
「……そうだ。私たちがここで諦めたら……」
ここで諦めたらもっと悪いほうへ向かっちゃう!!
「ああ。そうだよ……俺達は諦めない!!」
「ありがとうそーじ……」
「気にすんなって。それに……」
「それに?」
「諦めてないのは、俺たちだけじゃないみたいだぜ」
そーじがそういった直後、私の耳に聞こえてきたのは……。
□□□□
(学校から走り出して、その途中で追ってきた尊にここまで連れてきてもらえた時までは、こんなことになるなんて想像もしていませんでしたわ……。
まさか尊が敵に操られていたなんて……。
それに……テイルドラゴンさんの正体が師匠……千優さんだったなんて……。ツインテイルズの正体は見当がついているつもりでしたが、師匠がテイルドラゴンさんだとは予想すらしていなかったのですから今でも驚いていますわ……。
ですが……その師匠は今、わたくしたちの目の前で、敗れそうになっている。
師匠が……私の大切なお友達が必死になって戦っているというのに……わたくしは……見ているだけですの?)
悔しさと無力感が慧理那に押し寄せていた。
「もう……見ていられませんわ……」
地べたに伏したまま動くことが出来ず、ただ蹴られ、踏まれ続けるだけのサンドバックと化した千優の姿から目を逸らそうとしたその時、
「……え?」
慧理那の目に飛び込んできた光景……それは……。
こちらへと手を伸ばす千優の姿だった。
(この状況でも……千優さんは、まだ諦めていない……)
それを見た瞬間、慧理那の中で何かが弾けた!!
□□□□
……目を開けると真っ白な風景が広がっていた。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ