第三章
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彼等は実際に供養をした、最後は人形達を全て川に流して送った、その際も低調にした。こうしてだった。
疱瘡神のことは終わった、その夜シャクインは寝ていると夢を見た。夢の中に疱瘡神と戦った草人形のうちの一つが出て来た。彼はシャクインにこう言った。
「よく供養してくれた」
「そのことですか」
シャクインは夢の中で草人形に応えた、カムイが宿っていたので敬意を以てそのうえで対している。
「それは当然のことで」
「人形だからか」
「それにカムイが宿られたので」
草人形にもこのことを話した。
「ですから」
「我等を全て供養してくれたか」
「はい、それに人形ということもあり」
このことについても話した。
「ですから」
「そうか、だがよく供養してくれた」
人形はそのシャクインに述べた。
「礼を言う」
「それには」
「及ばないか」
「そうです」
「そうか、最後までか」
「川に流して」
「そうか、だがな」
ここで人形は彼に言った。
「最後に川に流してくれたお陰でだ」
「そのことで、ですか」
「わしは川つまり水の力を貰ってな」
そしてというのだ。
「そちらのカムイになった」
「そうなのですか」
「水の中にいる魚達のカムイになった」
「肴たちの」
「ミンツチカムイいうな、これがだ」
ここでだ、人形は。
これまでの蓬で出来た草人形の姿から別の姿になった、碧の身体で濃い緑色の髪の毛を持つ独特の姿だ。
その姿になって彼はシャクインに話した。
「今のわしの姿だ」
「お身体が緑ですね」
「うむ、元々は蓬であるし水の中にいる」
「水の中の草ですか」
「水草だ、その色でもあってな」
それでというのだ。
「この通りだ」
「身体の色は緑ですか」
「うむ、それでこれからそなた達の行いがよければ」
その時はとだ、カムイとなった人形はシャクインに話した。
「大漁をもたらす、だが」
「行いが悪ければ」
「不漁をもたらす」
逆にというのだ。
「そうする」
「そうですか」
「そなた達のお陰でカムイになれたから常に大漁にしたいが」
「それは、ですか」
「そなた達アイヌにも善人もいれば悪人もいる」
このことも言うのだった。
「それで行いもな」
「いいものも悪いものもある」
「そうだな」
「はい、それは」
その通りだとだ、シャクインも答えた。
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