第二章
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すると大師は帝にこう言った。落ち着いて何も乱れることのない聡明に満ちた顔立ちであり端整さの中に叡智も感じられる。動きは頑健だがそこに品もある。
その彼が帝のお言葉を聞いて言うことは。
「畏まりました、すぐにです」
「会津にか」
「行って参ります」
「会津は遠いが」
「いえ、遠くはありませぬ」
大師は帝に微笑んで答えた。
「全く」
「そうなのか」
「縮地の法を使いますので」
「あの力をか」
「会津の民達は今こうしている間にもそのベロ長に苦しめられているやも知れませぬ」
そのことを思うと、というのだ。
「それならすぐにです」
「会津に行ってか」
「ことを収めて参ります」
「そうしてくれるか」
「民を安らかにするのが御仏のお考えなので」
こう言ってだった。
大師は帝の御前を下がるとすぐに縮地法で会津に赴いた、国司は大師が来たと聞いて驚きの声をあげた。
「まさか、文は今都に届いた辺りだぞ」
「ですがそれでもです」
「大師が来られました」
「今館の門の前におられます」
「我等も大師にお会いしたことがありますが」
「そのお姿間違いありませぬ」
「私もお会いしたことがある」
国司もというのだ。
「大師にな、ではな」
「それではですか」
「直接ですか」
「国司が会われて」
「それで確かめられますか」
「その様にしよう」
国司はすぐに大師に会った、そして。
まごうかたなき本人であったので先程以上に驚いて言った。
「まさか」
「縮地の法を使いましたので」
「都からすぐにですか」
「参上しました」
こう国司に言うのだった。
「只今」
「そうですか」
「それでベロ長ですが」
大師は早速国司に言ってきた。
「すぐにです」
「退治してくれますか」
「お任せを。悪さをしない様にします」
「それでは」
こう話してだった。
大師はすぐにベロ長のいるところに行った、彼は妖怪の気配を察しそのうえでそこにこの時も縮地の術で赴いた、そうしてその異様に舌が長い年老いた痩せた男の姿をした妖怪に言った。
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