第一章
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ベロ長
会津の方に古くから伝わる話である。
ここにはかつてベロ長と言われる妖怪が清んでいた、その名前の通り舌が非常に長い妖怪であった。
ただ舌が長いだけでなくその舌を使って川や沼の水を吸い上げてその水を村に向かって吐き出して洪水を起こさせていた、時には川や沼の水を全てのみ干して干からびさせてしまうこともあった。
当然会津の者達は困った、それで皆頭を抱えた。
「どうしたものか」
「あんな妖怪がいては田畑も水がなくて何も出来ん」
「米も野菜も作れぬ」
「しかも洪水を起こして家を流れさせる」
「これではたまったものではない」
「どうにかならぬか」
「国司様にお願いするか」
会津だけでなくこの地域を治めている朝廷からつかわされた者にというのだ。
「そうするか」
「それしかないな」
「それが一番か」
「では国司様にお願いしよう」
「ベロ長をどうにかして下さる様にな」
こう言ってだった。
会津の者達は国司にベロ長を何とかしてくれる様に頼み込んだ、だが国司も。
難しい顔でこう言うばかりだった。
「私も何ともしたいが」
「それでもですか」
「ベロ長はどうにもなりませぬか」
「あの妖怪は」
「川や沼の水を一気に飲み干して吐く様な相手だ」
そこまでの力があるからだというのだ。
「到底だ」
「国司様のお力でもですか」
「どうにもなりませぬか」
「私もどうにかしようと思ってだ」
それでというのだ。
「一度多くの兵を連れて退治に向かったが」
「その時はどうなったのですか」
「一体」
「吸い込んだ水の洪水で流されてしまった」
村がそうされた様にというのだ。
「だからな」
「手に負えませぬか」
「国司様でも」
「そうなのですか」
「無念だが。しかし」
ここでだ、国司はふと頭の中で思い出したことがあった、それで民達に対して真剣な顔で述べたのだった。
「弘法大師様ならな」
「あの唐に行かれて多くのことを学ばれた方ですか」
「恐ろしいまでの知恵と学識を備えておられるとか」
「法力も桁外れだとか」
「そう言われていますな」
「あの方ならどうにかしてくれるやも知れぬ」
こう民達に言うのだった。
「だからな」
「ここはですか」
「弘法大師様にお願いしますか」
「ベロ長をどうにかしてくれと」
「その様に」
「あの方は確か今都におられるし帝のご信任も篤い」
だからだというのだ。
「私が都の帝にこの地の事情と大師にお願いしたいと文を書く」
「そうしてですか」
「大師に来てもらい」
「そうしてですか」
「ことを収めてもらおう」
こう言ってすぐにだった。
国司は文を書き都に送った、その文を受取られた帝はすぐに読まれた、そし
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