第四章
[8]前話
「その様に」
「それではな」
「それでは。あとアルゴスですが」
ヘルメスは今度はその彼のことを話した。
「酔い潰れていますが」
「今はまだ、だな」
「やがて起きるでしょう」
酔いから覚めてというのだ。
「そうなりますが」
「ヘラに言われたことを出来ず落ち込むであろうな」
「そしてヘラ様に詫びるでしょう」
「しかしヘラはそうしたことは咎めぬ」
妻の性格をよく知っての言葉だ。
「別にな」
「はい、私の策にかかりましたし」
「あの者の性格を考えるとな」
「ああなるしかなかったので」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「あの者は咎められぬ」
「そうです、そしてまことにです」
「アルゴスは次はだな」
「より賢くなっていますので」
「この度の策は通じぬな」
「そのことはおわかりを」
こうゼウスに言う、そして実際にだった。
ヘラは自分の失態を必死に泣いて詫びるアルゴスに優しい声をかけた。豊満で気高さを感じさせる女である。
「よいです」
「よいのですか」
「ヘルメスが凄かっただけです」
彼の知恵がというのだ。
「それでは仕方ありません、むしろ」
「むしろといいますと」
「そなたの神の言葉に逆らわぬ心がです」
ヘルメスのそれにというのだ。
「よいです。ですがこれからは」
「その様なことはですね」
「ない様に私の言葉だけにです」
「従う様にですね」
「よいですね」
「はい」
アルゴスはそれまでヘラに平伏していたが顔を上げて応えた。
「その様に」
「そしてそなたのその生真面目さとこれまでの功績を讃え」
ヘラはアルゴスに優しい顔で述べた。
「孔雀の模様はそなたの目にしましょう」
「そうして頂けますか」
「そうします。ではこれからもです」
まさにというのだ。
「私への忠義と勇者としての戦いに励むのです」
「そうさせて頂きます」
アルゴスはヘラの優しさと寛容に感動した、そしてだった。
それ以降はヘラの言葉のみを聞く絶対の忠臣となった、そうなってはヘルメスも手出し出来ず二度と彼に関わろうとしなくなった。神話の頃の古い話である。
ヘルメスの知恵 完
2020・5・12
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