第一章
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ヘルメスの知恵
商売と泥棒そして伝令の神であり天空の神ゼウスの頼りになる知恵袋であるヘルメスは父でもあるゼウスに難しい顔で述べた。
「アルゴスからですか」
「イオを救い出して欲しいのだ」
ゼウスは密室でヘルメスに述べた、二人で向かい合って座ってそうして卓を囲んでいる。そのうえでのやり取りだ。
「今は牛に姿を変えているが」
「ヘラ様がですか」
「もう察していてな」
それでというのだ。
「そのイオのところにアルゴスを遣わしたのだ」
「アルゴスが見張りですね」
「そうだ、全身に百の目を持つあの男をな」
「それで私にですね」
「アルゴスの目を盗んでな」
そうしてというのだ。
「イオを救い出してくれるか」
「お任せあれと言いたいですが」
ヘルメスはゼウスにその難しい顔で答えた。
「今回ばかりはです」
「無理か」
「非常に難しいです」
こう答えるのだった。
「アルゴスが相手では」
「あの百の目は全てが眠らない」
「必ず一つは起きてです」
そうしてというのだ。
「見張ります」
「あれ以上の見張りはないな」
「しかもアルゴスは忠義の者です」
「ヘラに絶対の忠誠2を誓っているな」
「金やもので収めることも」
買収、それもというのだ。
「出来ません」
「そうだな」
「しかも強いです」
常に見張っていて忠誠心が高いだけではないというのだ。
「幾ら目が殆ど眠っていて身体もそうなっていても」
「そなたでは勝てぬか」
「とても。あのエキドナを倒したのです」
多くの怪物を生み出した魔物である、上半身は美女で下半身は大蛇という姿でその力は恐るべきものがあった。
「我々ですら倒せなかったあの女を」
「夫のテューポーン程ではなかったがな」
「しかし恐ろしい強さでした」
「そのエキドナを倒した者はか」
「私ではとても」
「そうか、しかしな」
それでもとだ、ゼウスはヘルメスに話した。
「そなたしかおらん」
「彼女を助けられるのは」
「そうだ、だからそこをな」
「アルゴスを何とかしてですね」
「イオを救い出してくれ」
「そうですか、ではここはです」
「何とかだな」
「知恵を使ってみます」
腕を組み眉を顰めさせて述べた。
「ここは」
「宜しく頼む」
「それでは」
ヘルメスはゼウスに答えはした、だが。
アルゴスを完全に眠らせることも買収も戦って勝つことも無理だ、それで知恵が回る彼もどうしたものかと思った。
それでアルゴスのところに赴く直前も正直どうしたものかと考えていた、だが彼がオリンポスの自信の館を出る時に。
息子のパンが館を出るのを見て彼に問うた。
「何処に行くのだ?」
「デュオニュソス様に呼ばれまして」
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