第二章
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「確かに」
「それならですね」
「先生には運が近付いてくる」
「そうなんですね」
「はい、これからもやっていけます」
高橋は微笑んだまま酒を飲みつつ言った、そしてそれからも。
彼は家をなくしてこれからどうなるかとなった、だが知人に笑って言うのだった。
「いえ、今聞こえていますから」
「餅をつく音がかい」
「近付いてくるそれが」
今持っている最後の金を使って飲みつつ知人に話した、しかもその飲み代は全て彼が出すと言っている。
「ですから全くです」
「心配無用かい」
「はい、周りは色々言いますが」
それでもというのだ。
「私自身はですよ」
「心配していないんだね」
「これからのことは」
こう言いつつ飲む、それも勢いよく。
「左様です」
「君は物乞いになるんだぞ」
家がなく金もなくなる、それでというのだ。
「それでもかい」
「ははは、何度も言いますが」
「大丈夫なんだね」
「左様です、まあすぐに幸運が来ますよ」
高橋はこう言う、そして実際にだった。
彼は声をかけてもらって日本銀行に入った、そこで知人にまた言った。
「この通りですよ」
「仕事を得てかい」
「家も手に入れました」
「文無し宿無しになったが」
「この通りです、私は運がいいのです。運がいいので日本の為にも働けています」
「運が悪いと駄目なのだね」
「そうです、運が悪い人は幾ら能力があってもです」
それでもというのだ。
「ことを果たせません」
「それはあるね」
知人もこのことはその通りだと答えた。
「何時でも運の要素は大きいよ」
「ですから私はです」
「いつも助かってだね」
「借金を思ったより多く背負わずにです」
「いい人に出会えたと懐かしめるんですね」
「そうです、ではこれからは銀行で働かせてもらいます」
こう言って彼は笑顔で知人とさらに話した、そして。
彼は働き続けた、その中で。
日露戦争の時のことは語り草になっていた、戦争をするにあたって戦費は何があっても必要であったが。
日本に露西亜と戦うだけの戦費はなかった、それで必然的に国債を借り入れることになったそれはあまりにも莫大で。
時の首相桂太郎も頭を抱えた。
「これだけの額借りられるか」
「もうここは一人しかいないぞ」
元老である伊藤博文がその桂に言った。
「高橋君だ」
「高橋君にですか」
「そうだ、彼に頼んでだ」
そしてというのだ。
「金を借りてもらおう」
「確かに」
桂も高橋走っている、それで言うのだった。
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