第二章
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「この東京には一千万の人がいても」
「その一千万のほんの一人なの」
「そんなものでしょ」
「目立たない、ごく普通の女の子ね」
「そうでしょ、本当に何でもない」
「夢ないわね、ここは何か特殊な能力発揮するとか努力して発奮するとか異世界に行って」
「異世界はないわよ、とにかくね」
私は友達に異世界という言葉に笑って返した。
「私が目立つことはなくて」
「このままなのね」
「普通に生きていくわ、世の中が世紀末になるとか大地震になるとかしてとんでもない方向に変わるよりはね」
「世紀末も大地震も願い下げね」
「そうでしょ」
「あと戦争もね」
「そういうのは絶対に起こって欲しくないから」
個人的には地震が一番嫌だ、東京にいると特にそう思える。
「だからね」
「平和なままであってくれて」
「その中で普通に生きていくわ」
こう友達に答えた、私は本当に自分が主役になる位置とは思っていなかった。けれど。
いきなり同じクラスの子に告白されてそれを受けてから変わった、彼と付き合う様になると一緒にいる時は。
自然と幸せな気持ちになって何か恋愛ドラマとか漫画とか小説のヒロインになった気持ちになった。それで武者小路実篤の恋愛小説を読んだりする様になって。
自分を恋愛小説のヒロインにあてはめたりして感情移入していってうっとりする様になった、それでだった。
友達の言葉を思い出して彼女に言った。
「人間主役になる時もあるのね」
「彼氏出来たら急に言ったわね」
「いや、本当にね」
彼女に学校に行く途中の電車の中で話した、これから部活の朝練だ。
「付き合ってるとね」
「自分がヒロインに思えるのね」
「それでわかったわ」
「そうなのね、じゃあ私も彼氏が出来たら」
友達は私の言葉を聞いて言った。
「ヒロインになれるのかしら」
「絶対そうなるわ、誰かを好きになって付き合ったら」
「ヒロインになれるのね」
「そうよ、だからね」
それでとだ、私は彼女に笑顔で話した。
「機会があったらね」
「付き合ってみればいいのね」
「そうしたらその言葉の意味が実際にわかるわ」
「どんな人でも主役になる時がある」
「そのことがね」
彼女に話した、そして私はこの時から主役になる時が何度かあった。
高校を卒業した時、大学に入学した時と卒業した時、入社した時。そして結婚した時に子供が出来て産んだ時。そうした時は私はいつも主役だった。思えば高校入学の時やコンクールで優勝した時もそうだった。家でも子育てでは主人よりも私が主役だった。人間は一見世界の中に埋没しているその他大勢に思えてもその実は違う。このことが交際した時にわかってそれからの人生でもわかった。その他大勢でも主役になる時がある、それが例え些細なことであってもその
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